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268.右手

2010.11.3


 ネタに困ってきたなぁ、と思いつつ「左手」を書いたなら「右手」も書けばいいじゃないか、という安直な考えで今回のネタです。
 前回の中でも、「右手には指揮棒を持っていますので、その役割は明白です。」などと、一言で済ましておりますが、役割は明白でもそれを果たすための技量は大変な物が必要であります。指揮の教本でも、やはりこの右手の関係から書き始められております。

 まず、指揮棒の持ち方。写真で解説されていますが、「悪い例」というのは、こんな持ち方する人いるんかい? という感じのもので、まぁ、正しいといわれる持ち方については見様見真似でも大きな間違いはないでしょう。
 次に構え方、姿勢が書かれております。これも悪い構え方の例が写真で示されていますが、プロの指揮者でもコンサート本番などを見ていると「正しい構え方はどこ?」なんていうことがザラですから、カッコよく見えればよいのでしょう。(もちろん基本は出来ている方々ですから、あまり本気にしないでくださいね。)

 さて、この次あたりに右手の使い方が書かれますが、まぁ、指揮法の殆どがこの部分であるといっても良いでしょう。右手の守備範囲は非常に広いのです。
 で、その中でもあらゆる動作の基本になっているのが、打点を示すことであります。

 実践的指揮法(P15)によれば
〈点〉の意識と脱力
 先ほど腕の重みを利用して腕を落とすと述べたが、これをたとえていうならば、ゴムまりあるいはピンポン玉を床の上に落として、弾ませる原理である。その際、上の基本位置を〈ゴムまりを離す位置〉、下の基本位置を〈ゴムまりが地面から撥ね返る位置〉として考える。ゴムまりが地面から撥ね返るところが音の出るポイントであり、それを〈点〉と呼ぶ。(中略)良い指揮法のためには〈点〉がはっきりしていることが条件である。

 とあります。私のイメージとしては、ゴムまりやピンポン玉よりスーパーボールが跳ねるのが一番ピッタリではないかと思います。
 加速しながら落下(自由落下運動ですね)し、地面に当たった瞬間に運動方向を180゜反転し上昇します。そして減速し速度が0になったところで落下に転じます。これの繰り返しです。
 この地面に当たった瞬間の動きがはっきりしないと「打点が分からない。」と言われることになるのですが、、、。


 #266で書きましたように、ある方から「打点が分からん」といわれたのです。「打点はどこか?」と問われましたので、「落ちてきて、上に撥ね返るこの瞬間。」と答えましたが、全然納得されない様子。そして「上がるときか?下がるときか?」などと訊いてきます。これには私の方が何を言っているのか分からなくなりました。点はあくまでも撥ね返る点であり、上がるとき、下がるときという軌跡ではないはずです。その時は訳が分からなくなり言葉を失っておりました。

 演奏会が終ってから実践的指揮法をパラパラと見ておりましたらP19にこんなことが書いてありました。
(前略)いま何拍めかを奏者に識別させるために、1拍め以外が大きく下の方向へくる運動にならない様に心がけなければならない。これを「1はダウン、ダウンは1、1をください。」という。〈ダウンは1〉というのは、奏者にとってダウンに見える拍は1と思ってしまうおそれがあるから、指揮者は振り方に気をつけよということである。(後略)
 つまり、四拍子の場合、二、三、四拍めを示す際に指揮棒は下方へ大きく動かすものではない、ということです。
 これのことなのかな?とも考えましたが、どうもシックリしません。


 で、今、落ち着いて考えてみると、思い当たる節がありました。
 予備拍の振り方です。問題になった曲は2/2拍子でありまして、入りを指示する予備拍は、「イチ、ニ、」と二拍振る場合と、「ニ、」と一拍で振る場合があります。二拍振る場合の振り始めはダウンから入ります。一拍の場合はアップから入ります。
 私は、二拍で振ったり、一拍で振ったり、バラバラで決まっていなかったのです。それで、「入りが分からん」と思われたのでしょう。
 しかし、指揮だって状況によって振り方は変わりますし、毎回100%同じ動作をするわけではないのです。予備拍をどちらから入っても曲の頭は1拍め(ダウン)なのです。
 まぁ、私の振り方の場合、考え無しに変わっていることがあるので、良いことではないのですけれどね。

 という、私の指揮の拙さを認識したところで、今回はお終いです。タイトルの「右手」からはちょっとずれたかもしれませんが、まぁ、いいでしょう。
【参考文献】
実践的指揮法 -管弦楽・吹奏楽の指揮を目指す人に- / 小松一彦 / 音楽之友社   

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