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269.目(もしくは視線)

2010.11.6


 ネタに困ったと申しておりましたが、「左手」、「右手」ときて、それならば体の各部分について書いていけばしばらくはネタに困らないぞ(内容はともかく)と気付いた私です。というわけで、今回は「手」の次ということで「足」へ、、、行きません。
 「目」です。古くから、「目は口ほどにものを言う」といいますし、スポーツなどでも「アイコンタクトは大切だ」とか、まさに演奏の場面では「演奏中の声を出せない場面では、アイコンタクトは重要」ということになります。

 では、指揮者は演奏中にどこをどのように見ているのかを、私なりに考えて見ました。前回まで参照していた、「実践的指揮法 ~管弦楽・吹奏楽の指揮を目指す人に~」には、目(もしくは視線)についての記述はざっと見たところありませんでした。他の指揮法教本にあるかは不明です。ということで、かなり頓珍漢なことを言ってしまうかもしれませんが悪しからず。
 カラヤンのように目を閉じているというのは、かなり特殊なことなので、今回は触れないでおきます。

 演奏開始の時は、ざーっとバンド全体を見渡し準備が整っているかを確認します。この時、全員と目が合うことが理想ですが、譜面を探してごそごそしている人などが何人かおります。演奏者の立場で考えてみると、準備が整うと指揮者を見ているというのが普通の動作のように思えますね。 一番、遅くなりがちなのがティンパニでチューニングに時間が掛かったりしますし、その他のパーカッションの皆さんも楽器の準備で動いていたりします。パーカッションが落ち着いて、こちらを見てくれるといよいよ演奏開始となります。
 以前、これを忘れてしまって曲を始め、目を合わせなかったパートがいきなり落ちたということがあり、非常に反省した記憶があります。

 開始の瞬間はどこを見ているか。まぁ、その前にチラッとスコアを見て確認をしております。はい、そして開始の瞬間です。
 ソロで始まる曲などは、その奏者を見て始めます。ファンファーレで始まる曲はトランペットを見て。テュッティ(全体合奏)で始まる曲は、ステージ奥のちょっと上あたりでしょうか、、、。大体、曲を始めるにあたって一番大事なパートを見ながら始めるわけです。
 しかし、アイコンタクトといいますと一対一な訳です。ファンファーレではトランペットといいましたが、やはり誰か一人を見ている訳で、トップ奏者ということになるのですね。
 曲の始まりでスコアを見ながら振り始めるのは、演奏者側に集中力が欠ける場合がありますので、良いことでしありません。

 曲の途中では、いろんな所を見ます。大事なフレーズの演奏する奏者、全体を見渡し、スコアを見て、天を仰ぎ(!)曲は進んでいきます。
 この時一番気をつけているのは、スコアを見過ぎないこと。スコアを見るということは、下を向くことであり、下手をすれば猫背になりカッコイイ姿勢からは遠ざかっていきます。そうしないためには、背筋は伸ばしたまま視線だけを下に落としスコアを見るの事になるのですが、最近は目が悪くなってきているのでなかなか辛いところです。スコアにかじりついているという印象だけは持たれないように注意したい物です。
 それから指示を出す方向を間違えると、空振りしたような物で恥ずかしい思いをします。これはスコアの読みが浅い所為なので自分の勉強不足であります。(でもねぇ、パーカッションなど本番間際でメンバーがそろい、楽器の配置を把握し切れていないときなどは、やってしまいますねぇ。)

 さて、いよいよ曲の終わりであります。これが私の一番悩みどころです。吹奏楽の場合は、「ジャーーーンッ!!!」と全体で盛り上がって終る曲が多いので、ある特定のパートを見ているというのは少し変な気がします。かといってスコアにかじりついているのもダメ。一体どこを見ていれば良いのでしょうか。
 この辺が曖昧なので、私は空ろな目をしてあらぬ方向を見ながら曲を閉じることが多かったのです。しかし、これでは奏者の気合が逃げていってしまうのは明白です。
 開始直前と同じ様に、全体をサッと見渡すということもありでしよう。最も大きな音を出しているパート(大抵の場合パーカッション)を見ているというのも一つです。しかし、終了の瞬間に全員を見たいというのはやはり無理ですねぇ。
 さてどうするのが良いでしょうか。

 ステージ奥の中央よりちょっと上のあたりを見るのが、良いような気がしてきました。しかし、そこには何もありません。
 と、ここでこの夏の一言を思い出しました。(それは奏者に向けられた「何に向かって吹くのか?」という言葉だったのですが)

 ステージ奥中央よりちょっと上辺りに「未来」を見ながら、曲を閉じれば良いのです。

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