前回は、弦楽器のパートを管楽器に移し変えることを書きました。では管楽器、打楽器は吹奏楽でも使われていますから、全くそのままでよいかと言うと、そうは行かない楽器があります。木管楽器と打楽器はそのままでよいでしょう。問題は金管楽器です。 ベートーヴェンが作曲していた時代では金管楽器のバルブはまだ発明されていず、自然倍音しか出せませんでした。そのため曲の調に合わせて、ホルンやトランペットは調の違う楽器を用意する必要がありましたし、譜面もその楽器の調で書かれております。吹奏楽の譜面ではトランペットはB♭管、ホルンはF管で書かれますので、その調に書き直す必要があります。 また、トロンボーの場合、アルトトロンボーンを使用していることがありますが、現代の吹奏楽団ではアルトトロンボーンを使用することは一般的ではありません。アルトトロンボーンは吹奏楽で使用されるテナートロンボーンより高い音域を演奏しますので、テナートロンボーンで演奏できない音がある場合別の楽器に移す必要があります。 さて、私はチューバやユーフォニアムの演奏経験がありますので、上のような問題があっても、トランペット、トロンボーンについては、同じB♭管の楽器ですから、どう対処したらよいか想像をつけることが出来ます。しかし、なんとも想像し難いのがF管のホルンなのです。さらに、ホルンという楽器は金管楽器の中で最も古くからオーケストラにありましたから、他の楽器にはない作法があるようなのです。 まず、管の調なのですが、ベートーヴェンの交響曲に関して、どの楽章に何調の楽器が使われているかを調べてみました。
第2番第2楽章、「運命」第3楽章は曲の途中で楽器を持ち替えています。「英雄」第2楽章は2本のC管と1本のE♭管、「第九」第1〜3楽章はD管とlowB♭管を2本ずつ、第4楽章では途中からD管4本に持ち替え、としています。 こう見てみると9曲の交響曲で、lowB♭管、C管、D管、E♭管、E管、F管、A管という7種類のホルンを使っていることが分かります。 こららをすべてF管に移し替えるわけですが、 F管はそのままでよしとして、 近い調のE♭管は長2度下げればよいと、、、 じゃあE管は短2度下げだな。 大体F管自体が実音から完全5度下げているわけだから、C管が実音の1オクターブしたなら、、、完全4度下げればよいのか? low♭って何だ? lowがあるならhighもあるのかな? A管はどうすればよいの? などと、混乱してまいりました。実際、Finaleで譜面を書く際は移調楽器のダイアログボックスで調を指定するだけなのですが、オクターブの関係が分からなかった場合はMIDIで再生してCDと聴き比べて同じなら良しとしてきました。まぁ、いつまでもそれではいけないので調べてみましょう。ウィキペディア、ウィキペディア。ありました。 リンクから参照してください。移調楽器の一覧表がありますが、なんとホルンは全部の調があることになります。B♭管についてはhighとlowとがあります。これでかなりすっきりしました。 さてここで気になる記述を発見。「古い楽譜の場合ヘ音記号の時は○○度高い」とあります。つまり、ヘ音記号の場合、1オクターブ低く記述するということなのです。 今まで不思議だったのですよ。ホルンの譜面は大抵はト音記号で書かれているのですが、低い音が出てきたときはヘ音記号に代わるわけです。ところがその音がやけに低いのです。 雲吹定期演奏会でも1オクターブ低いままで演奏してしまったていたなぁ。他人のこと(#77で書いたような)は笑えなくなってしまいました。 以前に一度、後輩のホルン吹きに「ヘ音記号で書くときは低くなるの?」と訊いたことがあったのですが、そのときは「そのままですよ。」という返事でした。彼は、古くない楽譜の場合で返事をしてくれたのでしょうね。吹奏楽の場合、古い楽譜というのはないでしょうから。 今回は、今まで知らずにやっていたことを勉強できました。調べてみるものですね。 ところでタイトルの「管を巻く」ですが、ホルンの管を円く巻いた形(言ってしまえばほとんどの金管楽器は管を巻いているわけですが)から連想した言葉です。辞書を引いてみたところ「とりとめのないことをしつこく言う。」とありました。すみません、とりとめのないことを言っていたのは私のようでした。 【参考文献】 ベートーヴェン交響曲スコア / 1〜8番 音楽之友社、9番 全音楽譜出版社 ウィキペディア フリー百科事典 http://ja.wikipedia.org/wiki/移調楽器 |