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81.エボニーさん

2007.4.7


 「エボニー」とは黒檀のことで、木管楽器の材料になることもあります。Jazzでは、クラリネットのことを指します。ストラヴィンスキーはエボニーコンチェルトという曲を書いていますね。(ということを、友人のクラ吹きから聞きました。)

 ということで、クラリネットのお話です。
 前回、金管楽器のことを書きましたが、実は木管楽器もまったくそのままで良い訳ではないのです。

 標準編成を考えたときに、オーボエとファゴットは1本ずつとしました。しかし、オーケストラの二管編成では2本ずつあります。この差をどうするかというと、2ndオーボエを、クラリネット、ソプラノサックス(標準編成に入れてなかった!)、トランペットなど、2ndファゴットは、バスクラリネット、バリトンサックス、トロンボーン、ユーフォニアムなどに移すことを考えます。両楽器とも2ndは伴奏が多いので、他の楽器で同じ音を持っていることも多いですから、違和感なく移せるのではないかと考えています。ただし、オーボエ2本、ファゴット2本でハーモニーを作っている場合は、どうしても再現できません。ここは辛いところです。後述する予定ですが、私のベートーヴェン編曲ではオーボエ、ファゴットは2本ずつで書いてしまっています。アマチュアの吹奏楽団で2本ずつ揃っているところは少ないと思うのですが。

 そして、クラリネットです。クラリネットは弦パートを受け持つように考えました。しかし、オーケストラにもクラリネットはあるのです。こちらの方もオーボエ、ファゴットと同じくは1本ずつの2パートです。そのまま吹奏楽のクラリネットパートに移そうとすると、すでに弦パートが入っていて入れることが出来ません。入れるとしても、人数もパート数も合わずバランスが取れません。弦パートが休みのときなら、1stソロ、2ndソロということで書くことも出来ますが、そういう時は稀でしょう。以前、オーケストラのクラリネットパートをSoloクラリネット、弦パートを受け持つ方をTuttiクラリネットとして編曲されたものを見たことはありますが、やはり一般的ではありませんね。このあたりは、編曲者がいろいろと知恵を絞っているところではないかと思います。(リダクションしてから再オーケストレーションというのが正しい道でしょう)

 オーケストラのクラリネットパートをクラリネットで演奏するとまずいこともあります。原曲で、弦とクラリネットが掛け合いをしていた場合、両方をクラリネットで演奏する編曲にしてしまうと、掛け合いが同じ音色が続くことにより掛け合いでなくなってしまうのです。これでは、原曲のオーケストレーションの面白みが消えてしまいます。

 話は逸れますが、オーケストラ曲を吹奏楽で演奏する方法の一つにトランスクリプションというのがあります。これは、「バンドメイツのための吹奏楽小事典」によれば、
 ある楽曲で、指定されている楽器と異なった楽器で演奏する際の楽譜の書き移しのこと。管弦楽曲を吹奏楽で演奏する際に、ヴァイオリン・パートをクラリネット・パートで演奏できるようにしたりする場合など行われる。(≠アレンジ)
 というもので、オーケストラの譜面を機械的に移し変えた場合のことです。(私の場合もこれに近いものはありますが、もう少しは考えているつもりです。)
 実際の演奏の場合は、管パートは勿論そのまま、弦パートは
ヴァイオリンはピッコロ、フルート、クラリネット等
ヴィオラはクラリネット、アルトサックスサックス、アルトホルン等
チェロはバスクラリネット、テナーサックス、ユーフォニアム、バリトンホルン等
コントラバスはコントラバスクラリネット、バリトンサックス、チューバ等々
で演奏します。音域的に出ない音は演奏しませんが、基本的に出せる音は全部吹くようです。
 実際にこういう演奏を聴いたのですが、上で言ったように、フルートとヴァイオリンパート、クラリネットとヴァイオリンパートが混ざってしまって、原曲の楽器の対比が消えてしまい、オーケストレーションの面白みが無くなり濁ったような響になっていました。こういう音になるような編曲はしてはいけないな、と強く思ったわけです。
 (チェロパートをホルンで演奏しているのを見たときは驚きました。まぁ、ホルンの方のテクニックは大変なものですが、曲としてはいかがな物かと)

 話を戻しまして、ではオーケストラのクラリネットパートはどうしたらよいでしょうか。吹奏楽の中で2本一組であって、運動性能がよい楽器、、、。ありますね。アルトサックスです。
 基本的にアルトサックスに移すことにしましょう。こうすることにより、オーケストラでのヴァイオリン対クラリネットの関係がクラリネット対アルトサックスという形で生かされることになります。ただし、アルトサックスの音域はクラリネットより狭いので、足りない部分はソプラノサックスに持っていく場合もあります。

 これでも困った場合がありまして、非常に有名なクラリネットのフレーズなどでサックスで演奏すると違和感がある場合は、クラリネットに戻すことがあります。この辺、ちょっと自分でも勇気が足りないなあ、と思ったりします。


【参考文献】
バンドメイツのための吹奏楽小事典 / 小澤俊朗 編 / 東亜音楽社

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