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77.点と面

2007.3.10


 オーケストラの編成の楽器構成を見てみます。大きく分けると、弦楽器群、木管楽器群、金管楽器群、打楽器群に分けられます。
 弦楽器群には5種類の楽器があり、一つのパートを数人で弾きます。逆に木管楽器群、金管楽器群、打楽器群は一つのパートは一人で演奏します。
 オーケストラを客席の方から眺めてみますと、弦楽器群は指揮者を中心にしてステージ前方に扇状に配置されます。配置法によってどの楽器がどこに配置されるかは変わりますが、弦楽器群全体を見ればこうでしょう。その後ろに木管楽器群、金管楽器群、打楽器群の順に並びますが、これもいろいろな配置があります。
 このような配置で音がどのように出てくるかというと、弦楽器群の場合は一つのパートを数人に演奏していますから、ステージ上のその楽器が占めている“”から出てくることになります。その他の楽器は、パート一つで演奏者一人ですから、演奏者のいる“”から音が出てきます。もちろん弦楽器群でもソロで演奏すれば点からの音になります。
 これが、弦楽器群とその他の楽器群との音響上の大きな違いになっています。「面と点」という概念が解り難ければ「群と個」といってもいいと思います。

 よく、クラシック音楽をMIDIに打ち込んでいらっしゃる方で、この辺りの理解が不足している方を時々お見かけします。楽器設定のところで、例えばヴァイオリンを“Violin”で設定しているのです。この“Violin”は単音ですので点の音になってしまいます。弦楽合奏の面の音にするためには、“Strings”に設定しなければなりません。ちょっと、違いを聴いてみてください。

 点の音
 面の音

 どうでしょうか。同じ弦楽器の音のはずなのにかなり違いますね。まぁ、これはMIDIの音色上の違いですが、実際にステージで聴いてもこんな感じになります。


 一方の吹奏楽ではどうでしょうか。
 一つのパートを複数の人数で演奏するパートは、フルートとクラリネットです。吹奏楽において、単一の楽器で面の音が出せるのはフルートとクラリネットだけということになりますので、オーケストラ曲を吹奏楽に移し変える場合、弦楽器群パートはこれらの楽器が主に受け持つことになります。サックスが単体で弦楽器群パートを受け持つことは、その方が演奏効果が得られると考えられる場合のみで、どちらかというと稀なことになります。

 オーケストラでは面の音が弦楽器群だけなのに、吹奏楽ではフルートとクラリネットという二つの楽器になっているのは何故でしょうか。私が思うに、クラリネットだけでは高音域の演奏が困難だと考えられたためでしょう。クラリネットにもEsクラリネットという高音用の楽器がありますが、この楽器を複数使うことは高音域がうるさく(あるいはキツく)なってしまいます。その代わりとして高音域のコントロールがしやすいフルートを用いるのだと思います。

 こう考えてみると、吹奏楽の編成というのはオーケストラ曲をできる限り演奏しやすいように意識して作られているのだなぁと、思える面もあります。

 高音域、中音域はこのようにフルート、クラリネットに受け持たすことが出来ますが、低音域方面はどうでしょうか。ヴィオラの低音側、チェロ、コントラバスのあたりです。吹奏楽ではそのまま面の音を出せるパートはありませんので、複数のパートの組み合わせで対応することになります。
 アルトクラリネット、バスクラリネット、テナーサックス、バリトンサックス、ユーフォニアム、テューバを割り振っていきます。ヴィオラのハーモニーなどはトロンボーンでやってみるというのも手です。

 このようにして、まず「面と点」という観点で弦楽器群の管楽器への割り振りを考えていきます。

 なんだか、知らず知らずのうちに編曲講座になってきたようです。 

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