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76.差はどこにあるのか?

2007.3.3


 前回、吹奏楽界の方では、編成はあまり守られているものではないと書きました。それでも、オーケストラの何管編成というような標準的な編成はあります。ある意味、日本の吹奏楽の基準ともいえる、全日本吹奏楽コンクール課題曲の公募要項にある編成を見てみましょう。

楽器 人数
ピッコロ 1
フルート T 3
フルート U 3
オーボエ 1
バスーン 1
E♭クラリネット 1
B♭クラリネット T 4
B♭クラリネット U 4
B♭クラリネット V 4
アルトクラリネット 1
バスクラリネット 1
アルトサックス T 1
アルトサックス U 1
テナーサックス 1
バリトンサックス 1
トランペット T 2
トランペット U 1
トランペット V 1
ホルン T 1
ホルン U 1
ホルン V 1
ホルン W 1
トロンボーン T 1
トロンボーン U 1
トロンボーン V 1
ユーフォニアム 2
テューバ 2
ストリングベース 2
打楽器群
 ティンパニ
 バスドラム
 スネアドラム
 シンバル
 タンバリン
 トライアングル
 グロッケン
 シロフォン
5名以内で演奏可能であること

 これは、要項にあるA編成とされているものです。B編成というものもあり、こちらはオーボエ、バスーン、E♭クラリネット、アルトクラリネット、ホルンW、ストリングベースがない場合でも演奏できるよう配慮し、かつ打楽器群を4名以内で演奏可能と指示されています。
 また、各パートの人数については、全日本吹奏楽コンクール実施規定の中学校の部、高等学校の部の参加人員が50人以内とありますので、この50人を私の考えで割り振ったものです。打楽器群は5名としました。
 これが標準的な編成ではないかなと思います。もちろん、異論のある方はいらっしゃいますと思いますが、ここではこれで話を進めます。

 作曲家の皆さんは、課題曲以外の場合は、この編成に多少の変更を加え、作曲することになると思います。最近の曲は編成が大きくなっているものもありますから、この倍くらい必要な曲もあるのかも知れませんね。


 私が中学生のころですから、もう三十年ほど前になります。あるときのバンドジャーナル誌の読者からのハガキのコーナーで、「オーケストラ曲を吹奏楽にアレンジするには、弦楽器パートをそのままサックスパートに移してしまうのが簡単でよいのではないか。」という質問が載った記憶があります。回答の方は「そんなに簡単には行きませんよ。」といった感じだったと思いますが、実際に確認してみましょう。
 上の編成を#74で書きました、オーケストラの二管編成では大きい部類に入る「第九」のものと比べてみます。(今回は表でページを稼ぎます)

楽器 吹奏楽 オケ二管
(第九)
ピッコロ 1 1 0
フルート T 3 1 2
フルート U 3 1 2
オーボエ 1 2 -1
ファゴット
(バスーン)
1 2 -1
コントラファゴット 0 1 -1
E♭クラリネット 1 0 1
B♭クラリネット T 4 1 3
B♭クラリネット U 4 1 3
B♭クラリネット V 4 0 4
アルトクラリネット 1 0 1
バスクラリネット 1 0 1
アルトサックス T 1 0 1
アルトサックス U 1 0 1
テナーサックス 1 0 1
バリトンサックス 1 0 1
トランペット T 2 1 1
トランペット U 1 1 0
トランペット V 1 0 1
ホルン T 1 1 0
ホルン U 1 1 0
ホルン V 1 1 0
ホルン W 1 1 0
トロンボーン T 1 1 0
トロンボーン U 1 1 0
トロンボーン V 1 1 0
ユーフォニアム 2 0 2
テューバ 2 0 2
第1ヴァイオリン 0 16 -16
第2ヴァイオリン 0 14 -14
ヴィオラ 0 12 -12
チェロ 0 10 -10
コントラバス
(ストリングベース)
2 8 -6
打楽器群
 
ティンパニ
バスドラム
スネアドラム
シンバル
タンバリン
トライアングル
グロッケン
シロフォン
ティンパニ
バスドラム
シンバル
バスドラム

 弦楽器群の人数はウィキペディアを参考にしました。

 楽器の種類だけ見れば、最初に私が大雑把に言っていた「オーケストラから弦楽器を除いて、サックスとユーフォニアムを加えたものが吹奏楽。」といえなくもないのですが、数まで見るとかなり違っていることが分かります。

 双方にある楽器で、吹奏楽の方が人数の多いパートを見ていくと、
フルート、クラリネット族。
 逆にオーケストラの方が多いパートは、
オーボエ、ファゴット。
 これらの楽器は、オーケストラの譜面をそのまま吹奏楽に持ってきてしまうと、バランスがひどく悪いものになってしまいます。弦楽器パートをサックスパートに持ってくるという単純なものでは上手くいかないことは、すぐに分かってしまいました。

 それでは、次回はもうちょっと突っ込んで、オーケストラ曲を吹奏楽にアレンジする際のパートのやりくりを考えてみましょう。


【参考文献】

全日本吹奏楽コンクール課題曲 -第18回朝日作曲賞- (作曲公募要綱) / 社団法人 全日本吹奏楽連盟・朝日新聞社
全日本吹奏楽コンクール実施規定 / 社団法人 全日本吹奏楽連盟

社団法人 全日本吹奏楽連盟のホームページ
http://www.ajba.or.jp/

ウィキペディア フリー百科事典
http://ja.wikipedia.org/wiki/ヴァイオリン属

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