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75.吹奏楽の編成について

2007.2.24


 さて、吹奏楽の編成はどうなのかということを考えてみましょう。

 吹奏楽の楽譜を見てみると、スコアの表紙あたりに、INSTRUMENTATIONとして楽器編成が書いてあります。楽器の名前だけの場合もあれば、楽器と数が書いてある場合もあります。私はこの数字をパート譜の枚数だと思っていたのですが、本当のところはどうなんでしょうか。1枚の譜面は一人で見るという指示であれば、人数まで指定していることになります。
 というように、作曲者、編曲者は一応は楽器編成を指定しています。

 それでは、その指定された楽器編成が守られているかという、ほとんどの場合そうではないと思います。同じ曲を同じ譜面で演奏しているのに、Aという吹奏楽団では25人で演奏し、Bという吹奏楽団では60人で演奏しているというようなことがよくあります。コンクールの課題曲がいい例ですね。
 
 何故そうなってしまったかというと、吹奏楽団の多くはアマチュアであり、更にスクールバンドが大多数をしめているため、人数がそろわない、楽器がそろわない、という楽団が多く、守りたくても守れないという状態が長く続いた挙句、最初から守られるものではなくなってしまったように思います。
 最近の少子化の影響で、人数の少ない学校なども増えてきましたから、なおさらですね。
 逆に、人数や楽器の十分足りている吹奏楽団でも指定の編成に合わせてメンバーを減らすということをしません。指定にない楽器さえステージに乗ります。コンクールの場合人数制限はありますが、コンサートとなると100人以上ステージに乗るような吹奏楽団もあるようです。


 しかし、オーケストラの場合はアマチュアであってもしっかり編成は守っているように思います。(メンバーの少ないオーケストラの場合は、プログラムのメンバー表を見るとエキストラばっかりなんてのを良く見かけますね。)
 また、ブリティッシュスタイルのブラスバンドの場合もきっちり人数が決まっています。一度、2nd Euphoniumのエキストラということであるブラスバンドのステージに立たせていただきましたが、吹奏楽とは違った規律ある意識というのを感じました。
 こういったことを考えると、吹奏楽団だって編成を守ろうという意思があれば出来なくはないと思うのですが、そのような動きは私の知る限り無いようですね。作曲家の方を見ても積極的に編成を守らせようとしている人はいないような気もします。

 その作曲家側から見てみると、指定した編成が守られないことを嫌ったり、あるいは編成に変更を加えられても同様の演奏効果を得られるようにすることは出来ないと考えて、作曲しない人も多いでしょう。
 実際、現代音楽の演奏現場を見てみると、指定された編成が守られなければ、作曲者の意図が得られない曲がほとんどです。
 吹奏楽の作編曲を多く手がける人にとっては、編成を守らせることより、教育的配慮として編成が変化することは容認せざるを得ないのでしょう。作曲家の世界においても吹奏楽作曲家というのは独特のポジションであるような気がします。

 指揮者の側から見ても同じ曲を同じように表現したくても、吹奏楽団によって音の造り方を変えなければなりません。25人の吹奏楽団と60人の吹奏楽団に同じ指揮をしても同じ音は出てこないでしょう。指揮者から見ても吹奏楽というのはオーケストラの指揮とは別の能力を要求されることになります。

 なにか吹奏楽の編成というのは問題だらけのような話になってきましたが、いい面はないのでしょうか。

 私たちアマチュアプレーヤーから見れば、敷居が低いという意味で気軽に音楽を楽しめるといえそうですね。それが最大のメリットです。
 多くの吹奏楽団が存在できるということは、多くの人が音楽を聴くチャンスを得られることにつながりますから。

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