直線上に配置

78.あったのかU

2007.3.17


 私が、編曲作業をする上で非常に参考にしている本があります。

バンドのための編曲法 わかりやすいオーケストレーション
F.エリクソン 著 / 伊藤康英 訳 / 東亜音楽社

 私は発行されてすぐに買ったと思うのですが、一刷が1990年ですので17年も前の本なのですねえ。
 たびたび書いておりますとおり私は専門教育を受けていないので、この本のすべてを理解は出来ないのですが、都合のよいところだけをちょいちょいと参考にさせていただいています。

 この本の第18章(130P)に「オーケストラ曲からの編曲」という章があります。その冒頭を引用します。

 オーケストラ曲をバンドに編曲するためには、2つのアプローチがある。1つは、第1ヴァイオリンを第1クラリネットに、第2ヴァイオリンを第2クラリネットに、というようにオーケストラの楽器をバンドの楽器へと割り当てていく方法である。この方法は初期のバンド用アレンジ曲の多くに共通する確固たる編曲法であった。そして、今後もある程度までは有効と思われるが、極限音域に達するとその弱点が明白になってしまう欠点がある。もう1つは、可能な限りオリジナルのエッセンスを維持しながらも、オーケストラのスコア全体をよく見すえた上でバンドのそれぞれの楽器に置き換えていく方法で、前者よりはるかにすぐれたアプローチといえる。

 読み進めていくと、この後者の具体的な方法が書いてあり、それはオーケストラ・スコアを大譜表(ピアノ譜のように)書き直し、そこからバンドへの編曲を行うというものです。大譜表への書き直しを著者はリダクションと言っていますので、私も使わせてもらいます。
 リダクションの良いところは、音の構造が掴みやすくなることです。
二十段程度もあるフルスコアを一目で把握することは、非常に困難(私にとっては不可能)でしょう。

 私の編曲方法は、基本的にエリクソンの言う前者で、楽器の移し変えについては前回書いたようなことを念頭に置いています。で、曲が複雑になって把握しにくい部分があると、部分的にリダクションを行っています。「展覧会の絵」などはラベルの編曲があまりにも凝っていたため、単純化するためにリダクションをしました。
 全曲をリダクションした経験は、J.S.バッハの管弦楽組曲第三番の序曲を編曲したときです。調をニ長調から変ロ長調へ移調したことと、楽器編成がかなり違っていたためです。パソコンで譜面を書くことなど考えられなかった時期のもので手書きだったので、手間を掛けて書いたのですが演奏することはありませんでした。この譜面、手元にないのですがどこへ行ってしまったのでしょう。

 さて、今回この本を読み返していて、意外なことが書いてあるのを発見してしまいました。130Pにある記述ですが、

 オーケストラ作品をバンドに編曲する際に、まず第一に考えるべき重要なポイントは作品の選択であろう。後期ロマン派の作品などは選んでみる価値を十分持っている楽曲が多い。近代、現代の中にも、著作権の問題がからんでくるが、バンド向きの理想的な曲がたくさん見受けられる。
 ベートーヴェンの交響曲は、数多くの編曲がなされてはいるものの、あまりにも有名でオーケストラ向きの楽曲であるためにバンドには不適当といえるであろう。

 ベートーヴェンの交響曲が吹奏楽に不向きなことは(薄々)感じていますが、数多くなされていたということの方が驚きです。#71でも書きましたが、吹奏楽が広まる初期には、かなりあったのでしょうね。
 それにしても、一度も譜面を見たことがないというのも不思議です。


【参考文献】
バンドのための編曲法 わかりやすいオーケストレーション
F.エリクソン 著 / 伊藤康英 訳 / 東亜音楽社 発行 / 音楽之友社 発売

前を読む 『休むに似たり』TOP 次を読む



Copyright(C)2005-7 T.Miyazawa All Rights Reserved.

直線上に配置