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71.あったのか

2007.1.27


 先日購入した本ですが、白水社文庫クセジュの「管弦楽」です。日本語訳の第一刷が1961年ですので、私の生まれる前に出版されています。フランスでの原本の発行は記述はないのですが、1950年のアンドレ・ジョリベの作品に関する言及があるので、1950年代に書かれた本だと言うことがわかります。(アルテュール・オネゲルの没年(1955年)も記述がありますが、訳者が補った可能性もありますから)

 さて、この本には吹奏楽に関しての記述があります。ただし、50年ほど前のフランスでの状況ですから現在の日本のものとはずいぶん違うでしょう。
 当時の日本の吹奏楽の状況はコンクールが復活した戦後の黎明期といえる時代で、すでに完成の域にあったフランスの吹奏楽とは雲泥の差があったのでしょう。私の勝手な想像なのですが、訳者は作者らの言う吹奏楽をうまくイメージできなかったのではないかと思います。

 この吹奏楽の項に興味深い記述がありましたので引用してみます。(P157)

 金管合奏団と特に吹奏楽団とが演奏できる曲目には無限の変化がある。これらの曲目は前もっての編曲を要求するが、それは一種の離れわざであることもしばしばである。《ラ・シレーヌ》の番組には次ぎのような曲がはいっている。すなわちベートーヴェンの諸交響曲、『タンホイザー序曲』、あるいはリストの『第二狂詩曲』! 憲兵隊軍楽隊の番組に『アルルの女』の管弦楽組曲、『聖金曜日の魔術』L'Enchantement du vendredi saint、ベルリオズの『幻想交響曲』あるいはフランクFranck(1822-1890)の『ニ短調交響曲』・・・・・・

 《ラ・シレーヌ》というのは金管合奏団の名前です。番組と言うのはプログラムのことですね。意味からすればレパートリーのことでしょう。ちなみに《憲兵隊軍楽隊》とは、ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団のことです。

 さてさて、《ラ・シレーヌ》のレパートリーにはベートーヴェンの諸交響曲があったと言うのです。「諸」というからには複数あったのでしょうが、全曲でしょうか、どれ程の曲数あったのでしょうか。また、一曲の交響曲については全楽章があったのでしょうか。金管合奏団であることを考えれば、あまりの長時間の演奏は困難であるため、抜粋であることが多いのですが。なかなか気になるところです。

 また、金管バンドと言えばイギリスのものはよく聴きますが、フランスのものはほとんど耳にしませんね。どんな音がするのでしょうか。楽器編成も違うようですからかなり違ったイメージでしょうね。

 だんだんと聴きたくなって来てしまいました。今度CDでも探してみましょう。

 ともあれ、ベートーヴェンの交響曲全曲吹奏楽化を初めに考えたころは、前例はないだろうと思っていましたが、もしかしたらあったのかもしれないと思えてきました。まぁ、それでも私は私なりに完成までもって行きたいと思っております。

【参考文献】
管弦楽 / ルイ・オベール マルセル・ランドスキ 共著 / 小松 清 訳 / 白水社 文庫クセジュ

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