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387.毎日

2013.11.23


 「吹けない日があってもいいから、毎日、楽器に触りなさい。」
というのが、学生時代の先生に頂いた言葉です。
 学生時代は部活がありましたので、楽器に触らない日は稀でした。先生の仰りたいことは、「そんな稀な日でも楽器に触りなさい」ということでしたでしょうけれど。
 卒業して社会人になってからは、部活が無くなったのは勿論ですし、市民吹奏楽団に入団しても一週間に2日の練習日に触ることしかしなくなくなりました。「楽器を吹かなくても触る」ということはできましたが、楽器を吹かずに触るだけというのは、なかなか出来ることではありません。
 そういう訳で、楽器を吹く時間は激減したのであります。これは、大抵の人はそうであり、仕方のない事でしょう。家を建てる時には防音室を作り、毎日楽器を吹こうなどと夢見ておりました。

 そして、私には東京に転勤がありました。転居先の近くにも一般の吹奏楽団はありましたが、人見知りの私は入団を決意するに至りませんでした。寮生活で部屋が狭く、楽器を持ち込まなかったということもあります。 一旦、地元に戻った後の二回目の東京転勤は、家族帯同でしたのでそれなりに広い住いでした。楽器は持って行きました。しかし、やはり現地の吹奏楽団には入団せず。練習会場は近くだったのですが。

 それでも、楽器を吹かなければならんだろうと思い、購入したのがYAMAHAのサイレントブラス。これで毎日、吹くことは可能になりました。が、毎日吹くようになったかというと、残念ながらそうではありませんでした。
 ミュートの部分が重く、長時間吹いていられない。吹奏感が違う。正しい音程で吹けているか分からない。という不満点がありました。エフェクタを通して響きが変わるのは面白かったのですが、生の音でないことですぐに飽きてしまいました。演奏する機会が無いのに、吹き続けるというのも限界があります。
 結局、最長で2年間ほど楽器に触らないこともありました。よくピストンが固着しなかったものと胸をなでおろしております。良く聞く話では、ピストンが動かなくなって修理代十数万円なんてこともありますからねぇ。

 時は流れ、再び地元に戻ってくることが出来、市民吹奏楽団に再入団も致しました。これで、週一回吹くことは出来る様になりました。やはり、演奏の機会があるということが大きいですね。しかし、指揮者としての比重が大きかったため、楽器を吹く時間はそれほど長くは有りませんでした。

 さて、いよいよ永年の夢であった家を建てることになりました。今から三年前の事であります。勿論、防音室は設計の要求事項に盛り込みました。しかし、家を建てるということは想像以上にお金が掛かることで、夢見ていた防音室 (12畳間にオーディオシステムとスタジオ機材を設置して…)は到底無理なのでありました。実際には、6畳間 (1.5畳分は天井が低い) になりました。防音性能の方は、木造なので若干の音漏れはありますが、まずまずと言ったところです。
 これで毎日、吹くことは可能になりました。が、毎日吹くようになったかというと、またしても残念ながらそうではありませんでした。
 やはり、会社から疲れて帰宅すると楽器を出す気にならないというのが本音です。まぁ、それでも気が向いたらいつでも吹けるということで、回数が増えたことは確かです。楽器も増えましたし。

 そして、前回も書きましたように、毎日楽器を吹くとダイエットになるかもしれない、ということが影響いたしました。ここの所、毎日楽器を吹いております。動機としては、ちょっとズレテいるような気もしますが、結果が同じであれば気にすることはありません。

 ようやく、先生の教えである「毎日触りなさい」が実現しました。
 それにしても、その先生の言葉がずっと自分の中で生きていたということが、何とも感慨深いことであります。

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