突然ではありますが、バッハがベートーヴェンの交響曲に登場しているのはご存知でしょうか。 バッハと聞いて真っ先に頭に浮かぶのは、大バッハと称されるヨハン・セバスティアン・バッハ (Johann Sebastian Bach 1685-1750、以下、J.S.バッハ) であります。多分、最も有名な曲はトッカータとフーガ ニ短調 BWV565でしょう。吹奏楽にも編曲され、数多く演奏されています。 さて、ベートーヴェンの交響曲に登場するバッハとは、第6番『田園』に見られます。『田園』は、各楽章に表題が付けられています。 第1楽章 田舎に着いた時の楽しい感情の眼覚め 第2楽章 小川のほとりの景色 第3楽章 田舎の人々の楽しい集い 第4楽章 雷雨.嵐 第5楽章 牧人の歌。嵐の後の喜ばしい感謝の感情 となっております。この中で第2楽章の表題はドイツ語で、 Szene am Bach と書かれます。ほら、Bach が現れました。Bach というのはドイツ語で小川という意味なのですね。バッハという偉大ですが、小川さんというとその辺に居そうで、ちょっとおもしろいです。ピアニストの小川典子さんなんかは、ドイツに行って自己紹介するときは、 Mein Name ist Bach. なんて冗談を言っているのでしょうかね。 最近気になったもので、あるケータイゲームのTV-CMがあります。 プロレスラーの武藤敬司がバッハ風のウィッグをかぶり、リングの上で指揮棒を振っているというものであります。 バッハ+武藤 で バハムート だそうです。最初に見た時、思わずツッコミを入れてしまいました。 バッハの活躍した時代は、18世紀前半。この時代の指揮というのは、ハープシコード奏者が演奏しながら音楽の進行を滞りなく進めるものでした。また指揮棒を使う場合は、杖の様な棒で、床や指揮台を叩いて指揮をするものでした。現代の指揮棒につながるものが史上初めて使われたのは19世紀初頭で、使ったのはウェーバーやシュポアだったと云われています。つまり、バッハの時代には、TV-CMのような指揮棒は無かったのです。本当に、バッハが指揮棒を持っている姿には違和感があります (その前に、プロレスラーの姿をしている方が…)。 というように、イチャモンを付けたくなってしまったのですが、ふと考えなおしました。 「現代のプロレスラーがバッハの姿の真似をしているだけで、18世紀のバッハがいる訳じゃないんだから、指揮棒を持っててもいいんじゃないの。バッハがプロレスラーの姿をしているのではないんだし。」と。 私も大分、心が広くなって来たのであります。 【参考文献】 ウィキペディア フリー百科事典 / バッハ 、 指揮棒 ベートーヴェン 交響曲第六番 / 音楽之友社ポケットスコア / OGT 6 ダン・カーリンスキー&エド・グッドゴールド 著 齋藤純一郎 訳 / おうちで指揮者 / 音楽之友社 |