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375.バッハの話

2013.8.26


 突然ではありますが、バッハがベートーヴェンの交響曲に登場しているのはご存知でしょうか。

 バッハと聞いて真っ先に頭に浮かぶのは、大バッハと称されるヨハン・セバスティアン・バッハ (Johann Sebastian Bach 1685-1750、以下、J.S.バッハ) であります。多分、最も有名な曲はトッカータとフーガ ニ短調 BWV565でしょう。吹奏楽にも編曲され、数多く演奏されています。

 さて、ベートーヴェンの交響曲に登場するバッハとは、第6番『田園』に見られます。『田園』は、各楽章に表題が付けられています。
 第1楽章 田舎に着いた時の楽しい感情の眼覚め
 第2楽章 小川のほとりの景色
 第3楽章 田舎の人々の楽しい集い
 第4楽章 雷雨.嵐
 第5楽章 牧人の歌。嵐の後の喜ばしい感謝の感情

となっております。この中で第2楽章の表題はドイツ語で、
 Szene am Bach
と書かれます。ほら、Bach が現れました。Bach というのはドイツ語で小川という意味なのですね。バッハという偉大ですが、小川さんというとその辺に居そうで、ちょっとおもしろいです。ピアニストの小川典子さんなんかは、ドイツに行って自己紹介するときは、
 Mein Name ist Bach.
なんて冗談を言っているのでしょうかね。

 最近気になったもので、あるケータイゲームのTV-CMがあります。
 プロレスラーの武藤敬司がバッハ風のウィッグをかぶり、リングの上で指揮棒を振っているというものであります。

 バッハ+武藤 で バハムート だそうです。最初に見た時、思わずツッコミを入れてしまいました。

 バッハの活躍した時代は、18世紀前半。この時代の指揮というのは、ハープシコード奏者が演奏しながら音楽の進行を滞りなく進めるものでした。また指揮棒を使う場合は、杖の様な棒で、床や指揮台を叩いて指揮をするものでした。現代の指揮棒につながるものが史上初めて使われたのは19世紀初頭で、使ったのはウェーバーやシュポアだったと云われています。つまり、バッハの時代には、TV-CMのような指揮棒は無かったのです。本当に、バッハが指揮棒を持っている姿には違和感があります (その前に、プロレスラーの姿をしている方が…)。
 というように、イチャモンを付けたくなってしまったのですが、ふと考えなおしました。
「現代のプロレスラーがバッハの姿の真似をしているだけで、18世紀のバッハがいる訳じゃないんだから、指揮棒を持っててもいいんじゃないの。バッハがプロレスラーの姿をしているのではないんだし。」と。

 私も大分、心が広くなって来たのであります。

【参考文献】
ウィキペディア フリー百科事典 / バッハ 、 指揮棒
ベートーヴェン 交響曲第六番 / 音楽之友社ポケットスコア / OGT 6
ダン・カーリンスキー&エド・グッドゴールド 著 齋藤純一郎 訳 / おうちで指揮者 / 音楽之友社

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