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373.ステージ上の異様な光景

2013.8.10


 吹奏楽コンクールをじっくり鑑賞したのは何年振りでしょうか。子供たちが吹奏楽部に入ったおかげで、中学、高校のコンクールを聴くことが出来ました (まぁ、毎年聴こうと思えば聴くことは出来るものですが)。

 A編成しか聴いていないのですが、まず驚いたのが演奏レベルが大変上がっていること。県大会が私が現役だった35年程前の東海大会のレベル位になっていますね。これには、ご指導に当たっている先生方のご尽力には並々ならぬ物があったのでしょう。私の現役時代には、外部からコーチを招いてレッスンを受けている学校は大変少なかったと思いますが、現在はほとんどの学校でプロ奏者のレッスンを受けているでしょう。プロ奏者が学校に来るということは、私らアマチュアにとってもいい機会でもあるので、ちょくちょく学校吹奏楽部に顔を出すことにいたしましょう。
 それから、楽器の種類が豊富になっているということ。打楽器群に、チャイム、ピアノは当たり前、ハープ、チェレスタ、ウィンドマシーン‥等。管楽器に目をやれば、コーラングレ、コントラアルトクラリネット、コントラバスクラリネット、フリューゲルホーン、ピッコロトランペット、ソプラノサックス‥等。私らには考えられない編成の充実ぶりです。また、従来からある楽器も、ピカピカの新品が多かったような(私の母校はそうでもなかったですけれど)。
 見た目にも、凄い演奏をするように感じてしまいますねぇ。

 ところが、如何な物かという光景をたくさん見ることになりました。

 楽器が豊富になったのは良いのですが、そのような特殊楽器は出番が少ないのが常であります。掛け持ちをして演奏する学校の多いこと多いこと。

 もともと打楽器群は、メンバーに対して多くの楽器があるので掛け持ちするのは当然です。打楽器メンバーの内で掛け持ちは問題ないでしょう。また、トランペット奏者がフリューゲルホーン、ピッコロトランペットにという同族の持ち替えも問題ないでしょう。
 ところが、
 フルート奏者がハープへ
 フルート奏者がチェレスタへ
 フルート奏者がピアノへ
 トランペット奏者がハープへ
 オーボエ奏者が弦バスを演奏 (弦バスの位置はチューバから遠く離れた下手側)
 弦バス奏者がチャイムへ
 …
 そういった掛け持ちが多く見られたのです。掛け持ちのためには、当然演奏者の移動が伴います。

 課題曲で使用しない楽器を自由曲で使用するために、曲間で持ち替えのため移動するのは仕方ないでしょう。
 しかし曲中での移動は、如何な物かと思うのです。フルートとハープを二往復した奏者もいたように思います。一度に、2人以上が移動している場面もありました。音楽に直接関係のない動きなのですよ、これは。聴いていて大変気になりましたし、楽器を落としたり、倒したりしないか、余計な心配までしてしまいました。
 また、奏者の方も移動中は音楽から少なからず離れることになります。音楽に対する集中が途切れているはずです。いい演奏が出来ているのでしょうか。

 人数制限のあるコンクールです。出来るだけ遊んでいる人は少ない方が良いという考えでしょう。
 オーケストラであれば、たとえどんなに音が少なくても、管楽器奏者が打楽器まで歩いて行って演奏することはありません (多分)。

 移動している生徒たちを見ながら、「マスゲームのフォーメーションみたいだなぁ… 良く考えられているけど、音楽にとっては邪魔だよなぁ。」とぼんやり考えておりました。

 コンクールのお終いで、審査員の先生の講評の中で付きのようなコメントがありました。
「(客席に対して) 席を探しているうちに演奏が始まってしまったら、その場で止まるか、出ていくかして、演奏中に動かないでください。演奏や審査の気が散ります。」
 と。ステージ上の人の動きは気が散らないのか?とツッコミを入れてしまいたくなりましたけれど。

 吹奏楽コンクールっていうのは、楽器演奏本来の姿から離れて行ってしまう物なのでしょうかねぇ。わざわざ、規定で禁止する事ではないとは無いとは思いますけれど…  

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