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364.著作権人格権

2013.6.8


 先日、私の所属する吹奏楽団の次回演奏会のための選曲打ち合わせに参加いたしました。その中で、あるTVドラマの主題曲を演奏したいという案が挙げられました。ところが、調べた頃その曲の吹奏楽版譜面は出版されていないことが分かりました。

 とりあえず楽譜ネットで入手できる、その曲が収録されているピアノ曲集があることは分かり、編曲することを視野に入れて購入いたしました。
 私の場合、これまで編曲している曲は、著作権が消滅しパブリックドメイン(P.D.)となった曲しかしておりませんので、著作権者に編曲の許諾を取るということはしたことがありません。今回の場合は、編曲の許諾が必要であります。幸い、国内のドラマであり外国語でのやりとりは不要なので、ひとつやってみることにいたしました。

 JASRACの著作権データベースJ-WIDで検索してみますと、著作権者は、出版社と作曲者であることが分かりました。
 早速、出版社の方へこの曲の吹奏楽へ編曲の許諾は得られるか、メールにて問い合わせいたしました。
 しばらくして、ご担当の方からご回答を頂きましたが、次のような内容でした。

 1.当出版社では編曲の許諾は行っていない。(文脈からして、許諾の判断はしないとということで、編曲不可という意味では無いと思います。)
 2.著作権人格権に抵触しない条件で、利用可能である。

 ということで、著作権人格権に抵触しなければ編曲可能と解釈するに至りました。
 では、著作権人格権とは何か。
 1.公表権 未発表の作品を公表する/しない権利。
 2.氏名表示件 著作者として氏名を表示する/しない権利。
 3.同一性保持権 著作物の内容または題号を著作者の同意を得ずにむやみに改変されない権利。
 また、
 「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作権人格権を侵害する行為とみなす」(著作権法第113条3項)
 という、重要な規定もあります。
 公表権についてはすでに公表されている曲であり抵触しないでしょう。氏名表示件については、公表されている通りの著作者の氏名を表示すれば抵触しないでしょう。
 問題は、同一性保持権であります。これは、作曲者が同一性を保持しているかを判断する事であって、他人が出来ることではありません。作曲者のウェブサイトをたずね、問い合わせフォームから編曲許諾の依頼をいたしました。しかし、3週間が過ぎたところで回答を頂けておりません。お忙しのでしょうか。それとも、端から相手にしないということでしょうか。回答を頂けない限り、許諾されたとは判断できないので、編曲を開始することは出来ませんねぇ。

 出版されている譜面を見るとピアノ版の他に、ギター版、大正琴版、が編曲されてありますので、全く編曲が不可ということではないと思うのですが。吹奏楽編曲が、著作者の名誉声望を害するものでもないと思いますし。

 また、もう一点確認したいところもあるのです。歌謡曲などの場合、作曲者はメロディーだけを作曲して、バンド編曲やオーケストレーションは別のアレンジャーが行っている場合があります。このアレンジの著作権ですが、二次的著作物ということになり、かなり大雑把に乱暴に言ってしまうと作曲者が許諾しないと著作権管理されない(著作権はもちろんありますが、JASRACでは管理しないということ)ことになります。
 さて、件のTVドラマ主題曲の作曲者はどこまで作ったのでしょうか。メロディーだけ作りアレンジが別人ならば、メロディーに対して改変しない限り同一性保護は侵害しないと思われます。吹奏楽編曲も可能でしょう。
 アレンジまで行っていれば、やはり元アレンジから吹奏楽への改変になってしまいます。メロディーだけの作曲だとあってほしいと思いますが、やはり作曲者にご回答頂かないと分かりませんねぇ。

 もうちょっと待ってみるしかないのかな?

 その後、長らくご不在だった旨のご連絡と、編曲の許可を頂くことが出来ました。更に、ご自身がオーケストラに編曲されたスコアも頂きまして、大変感激しております。上の如く愚痴のような駄文を公表しており、全く恐縮の至りであります。
 張り切って編曲作業に着手するのであります。(2013.9.5追記)

【参考文献】
よくわかる音楽著作権ビジネス / 安藤和宏 / リットーミュージック
ウィキペディア フリー百科事典 / 著作権法

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