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357.日本的『我が祖国』

2013.4.23


 スメタナの連作交響詩『我が祖国』を聴いたのであります。この曲は、スメタナが祖国チェコ(ただし、当時はチェコという国家は無く、オーストリアの属領としてあった)の歴史や自然を題材に、作曲されています。組曲ではないので、各々独立した交響詩として成立していますが、第5曲、第6曲は関連性が深いので続けて演奏するのが効果的でしょう。
 しかし、単独で演奏される機会が圧倒的に多いのは第2曲の「モルダウ」であり、他の曲が単独で演奏されることは非常に稀でしょう。演奏の形態としては、「モルダウ」か「全曲」か、ということでしょう。

 第1曲 「ヴィシェフラド(高い城)」 モルダウ湖畔の古城の、栄光、闘争、没落が綴られています。
 第2曲 「モルダウ」 モルダウ川の流れに託し、森の狩、農民の婚礼、月の光と水の精、聖ヨハネの急流、最後には第1曲古城の動機が鳴り、チェコの風物を描いています。
 第3曲「シャールカ」 恋人に裏切られてから、世の男性を憎悪して復讐するシャールカの物語。男性としては、ちょっと怖いなぁ。
 第4曲「ボヘミアの森と草原から」 作曲者がボヘミアの景色を眺めた際に呼び起される感情が音であらわされているとのこと。
 第5曲「ターボル」 ボヘミア南部、15世紀に宗教戦争を起こしたフス教の城塞があった地。フス教たちの讃美歌を軸に戦闘的な音楽が展開される。フス教徒の不屈の精神と勝利への意志が高らかに讃えられていく。
 第6曲「ブラニーク」 フス教徒の英雄たちが眠りについているブラニーク山。彼らがよみがえってボヘミアに栄光をもたらす様子が描かれている。

 という内容であり、これだけ祖国の自然、歴史を盛り込んでいれば、国民的音楽として支持されるのも当然でありましょう。きっとチェコの人たちはみんなスメタナの『我が祖国』を誇りに思っているんだろうなぁ、と勝手に思いを巡らしておりました。

 日本には、こういう管弦楽曲は無いのだろうか?

 ふと、そう思ってしまったのです。日本の成立から歴史を描いたような曲、しかも国民全体が誇りに思っているような。
 「君が代」はある程度そのような意味合いを持っているとは思いますが、大規模な管弦楽曲ではないですねぇ。そもそも日本国民があまり日本人作曲家の管弦楽作品を知らない様だし。さて、本当に無いものだろうか。

 と、思った時に閃いたものがありました。
日本の歴史を扱った管弦楽曲で、国民に広く知れ渡っている曲とは。

 NHK大河ドラマのオープニングテーマ曲。
 いや、ほら、その、物を投げないでください。ね、ね。
 だってそうでしょう。条件に当てはまっているじゃないですか。まぁ、ただ、一曲一曲は3分未満と短いし、作曲者も様々ですし、一曲の大きな曲とは言えませんが。

 しかし物は考えようです。
 昭和38年に第1作「花の生涯」から数えて、今年の「八重の桜」は第52作になります。これらをですね、時代順に並べ替えるのです。中には、同じ人物をテーマにした、所謂カブった物もある訳ですが、それはそれでよいのです。そして、これらの曲をですね、池辺晋一郎大先生(決め打ちです。なにしろ大河ドラマのテーマ曲を5曲も手掛けていらっしゃる)に大交響曲に仕立て直して頂くのです。誰が頼むかは知りませんけれど。池辺先生が自発的にやって頂けると大変よろしいのではないかと思います。

 そうすればですね、誰もがご存知のメロディーがふんだんに現れる、日本の歴史を表現した大管弦楽曲が一丁上がりという訳です。

 どうでしょう、池辺先生。ご一考いただけますでしょうか。
 (委嘱料は、私からは出せませんけれど)

【参考文献】
PROGRAM NOTES / スメタナ 連作交響詩〈我が祖国〉(全曲) / 満津岡 信育 / 読響 MONTHLY ORCHESTRA 04

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