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339.『第九』吹奏楽版を聴く

2012.12.15


 初めて『第九』を吹奏楽に編曲しようと思ったのは、いつだったのか。
定かな記憶はないが、中学三年生の終わりの頃に、『第九』のスコアを入手した時ではないだろうか。

 私にとって、今回の演奏会の始まりは、依頼者の熱意を感じるところから。最初にメールを頂いたのは1月下旬。何回かのやり取りの後、直接会って話をしたいということで、当地に足を運んでくるということになった。お会いして、お話を伺うと、並々ならぬ熱意を感じるものがありました。すでにホールは押さえてあるという。愛知県芸術劇場。ワインヤード型の立派なホールです。大学生が大したものだと感心しながら話を詰め、若干の譜面の修正を希望され、打ち合わせを終えました。

 5月には、譜面の修正を終え送付。その後の練習状況は知る由もなかったのですが、7月の終わりにはチラシが出来たという連絡。
 本当に演奏会がされるのだという、実感が沸いてきたのではありますが、自分たちの演奏会も形にならないうちは、それどころではないといことではありました。

 そして迎えた、12月10日。会社を休んで愛知県芸術劇場へ。
 開場前に並んでいる人たちを見て「私の編曲を聴いて下さる皆さんだ。」という妙なプレッシャーを感じたのでありました。
 休み明け平日ということもあって、入りの方はあまり良くなかったようですが。

 開演
 『第九』に先立って、『エグモント』序曲の演奏。これは、市販の譜面を使用されたものと思います。誰の編曲かな?
 オーケストラ的なサウンドを意識されているようで、ゆったりと過激にはならない演奏でした。

 休憩の後、『第九』
第1楽章
 弦と管との音色の違いは明らかですが、丁寧にあわてずにベートーヴェンの雰囲気を漂わせています。トランペットを鳴らせ過ぎないようにバランスにとても気を使っているようです。サックスがもっと出てきても良かったのではないかと思う個所もありましたが。
 アーティキュレーションとしてアクセントが欲しいなと思ったところもありましたが、これは金管を鳴らせ過ぎるというリスクを考えたようで、ソフトなところが多かったです。

第2楽章
 かなり気分が楽になって聴くことが出来ました。編曲としても無理がなかったのではないかと思います。演奏者の力量が充分発揮されていました。

 ここで、合唱団、ソリストたちの入場。

第3楽章
 冒頭のリードミスが少し痛かったか。もともと管楽器のソロの多い楽章ではあったので、安心感は増しました。ただ、編曲的に考えなければならないと思ったのは、終盤のヴァイオリンソロをクラリネットに持たしてしまったので、クラリネットの旋律が続き過ぎ、音色の変化が乏しくなってしまっていました。フルートやサックスに持たすことを考えるのが良かったかもしれません。音域や音量の処理を考えなければなりませんけれど。
 第3楽章から、ほぼ切れ目なく
第4楽章
 冒頭のPrest、怒涛のような音量、、、と思っていたところ意外と小さい。編曲では、フルート、オーボエ、バスーン、サックス、トランペット、ホルン、チューバ、ティンパニが音を出しているだけ。確かに、全体から見ればボリューム的に大きくない。音を足す必要がありそう。
 続いて、バス系楽器によるレティタティーボ。ストリングバスの無い編成だったため、チューバ、ユーフォニアム、バスクラ、トロンボーン?による演奏と音色のバラつきがちょっと気になる。吹奏楽で中低音域の音色の統一感を出すのも、課題ですね。バスクラ、バリサク、ユーフォニアムでやることが多いので、各パート複数人いればある程度解消されるのでしょうが。
 『歓喜の歌』のテーマに入り、『第九』らしさが増してきました。
 そして再び、今度は全体によるPrest。そしていよいよバリトン登場。
 鳥肌立ちました。
 合唱団は全体で60名ほどでしたが、吹奏楽に負けない声量でたっぷり歌ってくれました。
 もう、ここまでくれば、細かいところは気にならず、ちゃんと『第九』として聴いておりました。
 ただ、やっぱり弦の音がしない不思議な『第九』でしたが。

 最後には「ブラヴォー!」の声も飛び、盛大に終演したのでありました。


 最初に話を持ってきてくださった、指揮の植田さん。演奏をした愛知淑徳大学ウィンドオーケストラの皆さん。吹奏楽で1時間以上演奏を続けるのは、並大抵のことではなかったと思います。練習から本番まで、本当によく演奏してくださいました。
 吹奏楽で『第九』をやることに「面白い。」と言って(と伺った)合唱団をまとめ上げてくださいました神田先生、ソリスト、合唱団の皆さん、演奏してくださいましたありがとうございました。この場をお借りしてお礼申し上げます。
 私の夢が一つかないました。

それにしても、
 やっぱりベートーヴェンは凄かった。

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