直線上に配置

338.あの五線

2012.12.8


 大した事のない細かい事なのですけれど、気になってしまうとどうしようもないのでありまして、どこかで文句を言いたくなり、まぁ、ここて書いてしまうということになる訳です。

 皆さんも、音楽に少しでも関わっておられれば気が付いているとは思いますが、最近TVで放映されているあるCMのことであります。
 日本の製薬メーカーが製造しているお菓子を韓国の女性アイドルグループが出演しているもので、五線の上にアイドルたちの顔が並び、右からお菓子が流れてきて、、、あぁ、めんどくさい。 大塚製薬のソイカラのCMです。現在は2本目のクリスマス編が放映されていますが、1本目のソイカラのうたを見た瞬間に「良くないなぁ。」と思ったのであります。

 何が良くないかといえば、
 先に「五線」と書きましたが、五本の線が横長に等間隔に並んでいるだけでしたら別に何の事は無いのです。ただのデザインだと思えばいいのですから。しかし、そこにト音記号が書かれているとなると、音符を記すための五線になるのは明白であります。問題は、そのト音記号にあります。
 
 【大塚製薬 ソイカラCM | ソイカラのうた クリスマス編より引用】

 あぁ、見ただけで気持ち悪くなります。
 ト音記号が五線に対して小さすぎる、のみならず配置される場所が間違っているのです。少しでも音楽を勉強した人、つまり義務教育を受けた人ならばお分かりになると思います。

 『楽典』によれば、ト音記号とは、

 【楽典 / 池内友次郎 外崎幹二 共著 / 音楽之友社より引用】

 このように、渦巻の中心が第二線(下から2番目の線)を取り囲むことがト音を示す要件なのであります。大きさが多少違っても、形が少々崩れていても、渦巻の中心が第二線の上にあれば大した問題ではないのであります。

 このCMでは、どうしてこのようなト音記号を書いてしまったのでしょうか。アイドルの顔よりト音記号の方が目立ってしまうから? CMを見る限りそれほど目立ってしまうとは思えません。画面全体のバランスに影響があるとも思えません。CMの製作者だってト音記号くらいは分かるでしょうに、何故このような間違った絵を書くのでしょうか。

 「まぁまぁ、そんなに怒る事は無いじゃないですか。たかがお菓子のCMなんだし。」と思う人もいるでしょう。実際に私には、実害はありません。ちょっと気持ち悪いなぁと思うだけで。
 しかし、学校の音楽の授業でト音記号について習うのは、小学校3~4年でしょうか。音楽のテストで、「五線上にト音記号を正しく記せ」という問題が出たとします。で、教科書をあまり見てなかった児童、生徒がソイカラのCMを思い出し、「確か、最初のぐるぐるの上が真ん中の線に接していて、全体は五線の外にはみ出していなかったなぁ。よしよしこれで完璧だ。」などと言って回答したとしましょう。本人はTVで映った通りに回答したわけですから正解だと思っています。
 しかし、採点をする音楽の先生は「何だこれ?」と思いつつも、一応第二線を渦巻が囲んでいないことを確認して×を付ける訳です。配点にして4点くらいの問題でしょう。
 回答した児童・生徒は「TVで映った通りだから正解じゃん。」と先生に抗議しますが、受け入れられないでしょう。こうして、取れるはずの4点は不正解になってしまうのです。
 そして、テストだけで終わることなく、「CMは信用できない。」「CMを放映したTVは信用できない」「TVを作っている大人は信用できない。」と徐々に物事を素直に受け止めなくなっていくのです。
 たかがCMのために、性格が変わってしまうこともあるのです。まぁ、大袈裟に展開しちゃいましたけどね。
 
 その辺のことを、考えていただいて正しい表記をしていただきたいと願う次第であります。

【参考文献】
大塚製薬 / ソイカラCM | ソイカラのうた クリスマス編
楽典 / 池内友次郎 外崎幹二 共著 / 音楽之友社

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