直線上に配置

336.爆速タコ5終楽章

2012.11.25


 「タコ5」というのは、どのくらい一般的な呼び方か知りませんが、ショスタコーヴィチ作曲 交響曲第5番のことであります。略して「タコ5」。
 どういう訳か、私が生演奏で一番多く聴き、レコード、CDも一番多く持っている曲であります。単に好きだということになりますけれど。
 好きな曲であるということは、演奏したくなるという気持ちも強くなるものでありまして、過去に定期演奏会で演奏したこともあります。学生時代のことを思えば吹奏楽コンクールで演奏したいという気持ちもありました。
 この「タコ5」、交響曲でありまして全4楽章、演奏時間50分弱(バラつき大きいけどなぁ)というところであります。吹奏楽コンクールでの演奏時間は課題曲と合わせて12分間ですので、ほとんどの場合演奏されるのは第4楽章(終楽章)であります。しかし、この第4楽章であっても通常の演奏では10分を超えるのがほとんどですので、多少なりともカットしなければなりません。カットというのは、以前にも書きましたが、あまりよろしくないなぁと思っている物です。 で、

 はたして、カットなしでコンクールの自由曲として演奏できるのか?

 という疑問がわきました。
 きっと、実際に演奏されたことは無いだろうと思っていたのですが、ネット検索をしたところ、1971年のコンクールで西宮市立今津中学校が演奏しておりました。その演奏時間、9分7秒ほど。聴いてみたところ、破綻していると思えるほど速いテンポの演奏ではありませんでした。
 しかし、この演奏時間ですと、課題曲の演奏時間は、自由曲へのインターバルを10秒としたとして、2分40秒までとしないとタイムオーバー失格となってしまいます。これまでには2分半程度の課題曲もありましたから不可能ではありませんが、多くの課題曲が4分程度であることを考えると、いつでも出来るということではありません。自由曲としては8分は切っていたいものです。
 ということで、タコ5終楽章は8分以内で演奏するとどうなるか、というアホなことをやってみたいと思います。

 最近では波形編集ソフトというものがあり、時間を圧縮して(ICレコーダーの速聴き機能と同じ)しまうことも出来ますが、それでは実際の演奏と違う物ですので無しとします。
 何をしてみるかというと、実際に演奏された数種類のレコードなりCDから、演奏の速い部分を寄せ集め、最も速い一曲としてつなぎ合わせようということです。まぁ、これだって実際の演奏とは違う物ですが、まぁ、いいじゃないですか。
 少し残念なのが、著作権の関係で、そうやって作った音源は私個人でしか楽しむことしかできないのであります。悪しからず。

 実際の演奏で、演奏時間が短かったものは私の所有しているレコード、CDでは、
・レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニックで1959年の録音、 8分56秒
・イシュトヴァン・ケルテス指揮スイス・ロマンド管弦楽団で1960年頃(ライナーノートに記載なし)の録音、 8分43秒
が、該当いたします。両方とも9分は切っており、今津中よりは短いということになります。

 更にネット検索をしておりますと、冒頭からの速い部分は、エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団の1966年の録音が爆速であるという情報を仕入れました。第4楽章全体では、10分ちょうどなので、ゆっくりな部分が遅いのでしょう。幸いにしてこのCDも所有しておりました。

 この3種類の演奏をツギハギして最も速い演奏を作ろうという魂胆です。

 タイムを測定する区間を決めます。練習記号はポケットスコア、音楽之友社版OGT84によります。

A. 冒頭から、練習番号111の7小節目の2拍目まで
 ここでは(B.のスコアの矢印のところ)、速度指示は変わっていないのですが、大抵の演奏は遅くなるのですねぇ。不思議です。ショスタコーヴィチが表現できなかった何かを読み取っている指揮者が多いのでしょうか。

B. 練習番号111の7小節目の3拍目から
 練習番号111での速度指示は、二分音符=92で、12小節後の練習番号112では二分音符=80となっております。


C. 練習番号121から
 練習番号121での速度指示は四分音符=100-108


D. 練習番号128から
 練習番号128での速度指示は四分音符=116


E. 練習番号131から末尾まで
 練習番号131での速度指示は四分音符=188 (印刷がつぶれていて、読み難い)



 これら5つの部分の各々の演奏時間を計ってみましょう。

A B C D E Total
バーンスタイン  3:03  3:37  0:52  0:39  0:45   8:56
ケルテス  3:22  2:33  1:23  0:42  0:43   8:43
ムラヴィンスキー  3:00  3:27  1:23  0:50  1:20  10:00
合成最速版  3:00  2:33  0:52  0:39  0:43   7:47

【A区間】 ムラヴィンスキーがぶっちぎりと思いきや、バーンスタインもかなり早かった。ケルテスもラストスパートが素晴らしく瞬間最高速は出ていたと思われるが、序盤のゆっくりさが響きました。
【B区間】 ケルテスの文句なし圧勝。他の二人に比べ約1分速い。
【C区間】 よくやくバーンスタインが一矢報いました。この短距離で30秒差は大きい。
【D区間】 バーンスタインが連続区間賞。ケルテスも競ってはいましたが。
【E区間】 ムラヴィンスキーは路線変更して堂々たるゴール。バーンスタインとケルテスは競り合って、わずかにケルテスでした。

 という訳で、各区間の最速タイムを足し合わせたところ、

 7分47秒

 というタイムをマーク。目標の8分を切ることが出来ました。これなら、コンクールの自由曲としてカットなしで演奏できます。まぁ、審査員の評価はどうなるか知りませんが・・・。

【参考文献】
・YouTube 西宮市立今津中学校吹奏楽部 (1971年) [交響曲第5番]終楽章
・ポケットスコア / ショスタコーヴィッチ 交響曲第五番 / 音楽之友社 OGT84
・ショスタコーヴィッチ 交響曲第五番 /
 レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニック /
 株式会社エフ・アイ・シー / ANC-76
・ショスタコーヴィッチ 交響曲第五番 /
 イシュトヴァン・ケルテス指揮スイス・ロマンド管弦楽団 /
 キングレコード株式会社 / GT 9084
・ショスタコーヴィッチ 交響曲第五番 /
 エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団 /
 Russian DISC / RD CD 11 023

前を読む 『休むに似たり』TOP 次を読む



Copyright(C)2005-12 T.Miyazawa All Rights Reserved.

直線上に配置