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333.憑依

2012.11.4


 憑依とは、「霊などがのりうつること」のことであります。実は、先週の駒ケ根市民吹奏楽団第27回定期演奏会のリハーサルおよび本番において、私は憑依されていたのです。そんな恐ろしいことを言わずに、普通に言ってしまえば「感化されていた」ということなのですけれど。
 前回書きました通り、学生時代の稲垣先生の練習風景を聴きました。その29年前の稲垣先生に改めて感化されたのです。

 ここの所の駒ケ根市吹での練習はというと、演奏者の皆さんが不快の思わないように言葉を選んで選んで易しく指示をしております。何しろ二十数年前に駒ケ根市吹で指揮を始めた頃は、それこそ歯に衣着せぬ喋りかたで、団員の皆さんから反発をいただきまして、多くの退団者を出してしまったという、苦い反省があったためです。
(これについては、高校のOBが集まった吹奏楽団というのは、7~8年経過した時点で、結婚や転勤など、生活環境の変化により退団される方が増え、団員が減るということもありますから、一概に私が悪かったのではないと思うこともありますが、拍車を掛けたのは確かかもしれません。)

 そういう訳で、優しい言葉づかいでの練習が続いていた訳ですが、時間がない時には、これはちょっとまどろっこしいのであります。
「1番トロンボーンの音程がちょっと高いようなので、低めに取っていただくと、ハーモニーが良くなりますよ。」とか、
「アルトサックスのテンポがちょっと速いようなので、テナーサックスのテンポを聴いて合わせていただくと全体のテンポ感も良い物になります。」
なんてことを言うより、
「トロンボーン、高い!」
「サックス、合わない!」

と言った方がストレートに伝わるのですねぇ。ましてや本番直前というのは、練習で一通りのことを言って来ているので、何が良くないかは奏者の方もある程度、察しが付くというものです。

 そこで、先週書いた稲垣先生の練習です。(もちろんこれは、学生に対しての練習であって、市民バンドや企業バンドの練習ではあまりきつい言葉は使ってらっしゃいませんよ。)
 読んでいただいてお分かりの通り、厳しくストレートに指示しておられます。(まぁ、中高の吹奏楽指揮の先生には、ほとんど怒鳴り散らし、怒りっぱなしの方もいるようですが)
 私は、この口調に感化されまして、リハーサルでいつもよりキツイ指示の出し方をしたわけであります。

 しかし、そんな風に思っていたのも私だけでしょうか。大抵の皆さんは、本番間際で緊張感があるのだ、と思っていただけかもしれません。自分としては、言いたいことをストレートに言っていたので、本番直前のストレスはあまり溜まらなかったのであります。その分、厳しい顔つきになっていたようで、指揮者の笑顔がないなんて言われましたが。しかしねえ、曲によっては笑顔で始めるのもおかしな場合もあるわけで、自然な顔つきと思っていただきたいのです。もともと、笑顔の多い人間ではありませんし。

 そういう訳で、本番直前に(29年前の)稲垣先生に憑依して頂き、締まったリハーサルになり、本番もなかなか良いものになりました。これからも時々、本番前にはあの練習風景を聴くことにしましょう。

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