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326.『巨人』第4楽章 吹奏楽版を聴く

2012.9.17


 9月11日、ニッポン・ウィンド・シンフォニー様 第7回定期演奏会にて、私の編曲いたしました、G.マーラー交響曲第1番『巨人』第4楽章を演奏して頂きました。第4楽章に先だって、『花の章』(初期の稿には第2楽章として存在したが、後に作曲者自身により削除された)を日景貴文氏の編曲版で演奏されました。『花の章』と第4楽章を演奏するというのは、吹奏楽で演奏する『巨人』の一つの形だと私も考えておりましたので、いい選曲だなぁ、と思いした。私も『花の章』のオーケストラスコアを購入しておりますが、まだ編曲には至っておりません。

 第4楽章の編曲は、「楽譜庫」の方にも書いてありますが、着手は2000年ころであり4年掛かりで一旦完成したものでした。これまでに何人かの方のご依頼によりお送りしておりますが、演奏されたという連絡はありませんでした。今回のニッポン・ウィンド・シンフォニー様のご依頼により、私が良くないなぁと思っていた、主にパート譜の読み難さ(同名異音の修正、音符サイズ、譜めくりの位置など)の見直しを行いまして、提供させていただきました。

 ニッポン・ウィンド・シンフォニー様は、東京藝術大学および主要音楽大学大学出身者を中心とする、若き精鋭プレーヤーによって結成されたプロフェッショナルのウインドオーケストラ (紹介文より) です。
 第5回定期演奏会では、私の編曲の『私を泣かせてください』を採用して頂きまして、今回は2度目の採用となりました。
 演奏会で取り上げる曲は、通常の吹奏楽演奏会ではあまり取り上げられない、管弦楽曲の大曲が多く、ユニークな定期演奏会となっております。今回もプロコフィエフのピアノ協奏曲第1番を取り上げられております。

 さて、今回の『巨人』第4楽章、冒頭のシンバルの一撃、管楽器の強奏、ティンパニのロール、その後にヴァイオリンパートのモチーフが演奏されるのですが、このヴァイオリンパートのモチーフがティンパニのロールの残響に紛れてしまい霞んでしまいました。ホールがシューボックススタイルのため残響が拡散しない所為かと思いました。弦パートの再現が吹奏楽編曲の一つの課題ですが、この辺りが大変難しいところであります。
 しかし、その後は信じられないサウンドが続きました。「吹奏楽でこんな音は聴いたことがない」と強く思いました。オーケストラそのままと言うと語弊がありますが、確かに違和感がありません。
 もともと、この曲はマーラーが大音量を得たかったために、管打楽器を多用しており、その部分は吹奏楽で再現できます。また、弦楽器の強奏部分も木管楽器を重ねていることが多く、吹奏楽での再現は比較的容易です。
 難しいのは、弦楽器の高音の速い動きです。吹奏楽でそれが可能なパートは、ピッコロとEsクラリネットと言うことになりますが、通常の編成では、1本づつ(複数使うと非常に耳障りになりますので)であり、弦パートが複数に分かれた場合対応できなくなります。しかし、マーラーのこの曲の場合、ピッコロ、Esクラリネットを複数使うことも考えられるでしょう。実際、原曲でもピッコロは2本使うようになっておりました。編曲する側から見ると、演奏する団体の編成が事前に分かっていれば対応できますが、不特定多数の楽団を考えた場合、より一般的な編成に近くせざるを得なくなります。まぁ、それでもホルン7本は譲れませんが。

 今回のニッポン・ウィンド・シンフォニー様の編成は全体で68人の大きなものでありました。やはり、この曲を演奏するにはこれだけの人数は必要でしょう。

 聴いているうちに、吹奏楽であることを忘れ、確かにマーラーを聴いているのだという感覚に浸りました。

 演奏が終わり、「ブラヴォー」の声が飛びました。通常のオーケストラのコンサートと同じ感覚でした。

 演奏会終了後は、今回の譜面採用のお声を掛けていただいた事務局の酒井さんにお礼のご挨拶をし、楽屋前で指揮の新田先生にもお話させていただきました。ここでは書けない一言なんかお聴きしたりして、、。

 また機会があれば、お世話になりたいなぁ、と切に思っている次第であります。そのためには、多くの曲の譜面を用意しておく必要がありますねぇ。 

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