「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という本が、昨年はベストセラーになったようです。私の買った本は、10月4日発行の第20刷であり、腰巻には「おかげさまで100万部突破!」と書かれています。公式サイトに寄れば、12月14日には電子版も合せて累計202万部突破、アニメ化や映画化もされるようで、大変な盛り上がりとなっています。 私のドラッカーに関する知識といえば、ほとんど皆無と言ってよく「経済だか経営だかのマネジメントだかの偉い人なのだな。」という程度でした。ただ、私の会社で受けた様々な研修の中には、リーダーシップ、職場運営、部下育成、問題解決などマネジメントに関するものがありましたので、直接読んでいなくてもエッセンスとしては知っている事もあるでしょう。まぁ、なかなか実践して成果に結びつけるのは難しいものですが。 で、この本、私も職場マネジメントでヒントが欲しいと思っていたところで読んでみたかったのです。吹奏楽団でも指揮者としてのマネジメントも必要ですからねぇ。 12月21日の東京出張の際、帰り間際に書店で購入し、バスの中で読むことにしました。4時間弱の行程、大きな字で270ページ程ですから、ゆっくり読んでも、読みきれるでしょう。 一応、「小説」として書かれたようですので、ドラッカーの入門書としてではなく「小説」として読みました。 まぁ、何と申しましょうか、小説としたら下手な部類に入ります。内容が軽い、スカスカな感じ。アドベンチャーゲームの選択肢を選んで進んでいる雰囲気で、小説を読んでいるような気がしないのです。箇条書きプラスアルファの羅列という書き方で、リアリティーが無いのですねぇ。 内容について言いたいことは沢山ありますが、かなり気に入らない部分を一ヶ所上げると、第6章「イノベーションに取り組む」で、他の部活と協力体制を作っていくところ。(P173) 吹奏楽部には、試合用の応援歌のアレンジを依頼した。これも、吹奏楽部にとって演奏しがいのある、本格的なものを頼んだ。すると、これは夏の大会にまで作りあげていこうということになり、(以下略) は? 演奏しがいのある応援歌、、、。想像できんなぁ。吹奏楽部にとって演奏しがいがあるということと、応援に要求されることで合致しているところは、フォルテシモで演奏以外無いでしょう。 作りあげるのに夏の大会まで掛かるような難しい曲を、吹奏楽部はコンクールだってあるのに、やってる場合なの? とか、どう考えても吹奏楽部のためになっていない。協力体制とは程遠いですよ。 まぁ、ネタが無いところを無理して書いているなぁとは思いますけれど。 では、ドラッカー入門書としてはどうか。ドラッカーの著書を読んでないのでなんとも言えない部分はありますが、表面的にしか舐めてないようで、これでドラッカーを語っちゃいかんだろうと思います。著者は『マネジメント』を熟読してこの本を書いているでしょうけれど。 ドラッカーの入門書への足がかりの本、というところが落とし所ですかね。 しかし、200万部も売れているという事実は何でしょう。どんな人たちが読んでいるんでしょうかねぇ。 ・ドラッカーを真面目に勉強したい人 → 真面目にドラッカーの著書を読むでしょうねぇ。 ・高校野球ファン → こんなストーリーと描写では納得できんでしょう。 ・面白物好き → 私はここですね。確かに惹かれるタイトルではあります。でも、もっと上手く小説にして欲しいと思う。 ・AKB48ファン → そう、なの? ・ベストセラーだから読んだ → どうしてベストセラーになったのでしょう? 分かりませんねぇ。まぁ、ダイヤモンド社のマーケティングとイノベーションが成功したということなのでしょう。 さて、文句ばかり言っていては良くありませんので、早速(ダイヤモンド社の戦略に乗せられて)、【エッセンシャル版】『マネジメント』を購入してまいりました。そして、この本の腰巻には、 ベストセラー 「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の原点となった書! 話題沸騰65万部突破! だそうで、、、ちゃっかりしてますなぁ。 【参考文献】 『もしドラ』公式サイト 岩崎夏海 / もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら / ダイヤモンド社 P.F.ドラッカー (上田惇生 編訳) / 【エッセンシャル版】マネジメント 基本と原則 / ダイヤモンド社 |