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272.揺れない

2010.11.28


 今日のお話は、結果的には揺れない方が良いということになります。

 指揮棒の持ち方の話です。物の本(私が愛読している「おうちで指揮者」ですが)によれば、指揮棒の持ち方というのは、

 (前略)〔この略した部分に面白いことが一杯書いてあるんですけれどね〕 まず指揮棒の握りの部分を右手の手のひらの手首に近い部分にあてがって、棒の部分を親指のふくらみと人差し指の第1関節の横との間に軽くおく。人差し指を手のひらの方に半分程曲げ、残りの指で握りの部分を指の届く限り包み込む。薬指の指先は手のひらに接していなければならない。 (後略)

 お分かりになりますでしょうか。本にあるイラストのとおりに右手を写真に撮ってみますね。
 
 まあこんな感じです。指揮するときには、手のひらは下側にして振ることになります。
 この様に、指揮棒の玉の部分を手のひらの手首寄り、玉から少しはなれた棒の部分を指で摘むと、指揮棒は右手に対して二点で固定されるために、右手と一体になるわけです。
 ただ、この握り方ですと力み易いのです。力強い曲などはそれでよい(いや、先日振ったある曲では力みすぎて右腕の筋がつりそうになりましたよ)のですが、軽やかに振りたいときなどは若干ぎこちなくなったりします。
 そこで、薬指や小指を少々弛めたり、場合によっては小指を立てたり、するわけです。

 で、最近の私の持ち方は、更に軽く持とうとしてしまうことがあり、つまり、人差し指と親指だけで摘んでいることがあるのです。無意識ですけれど。そうなりますと、先ほど書いたような指揮棒と右手が一体になるという感触から遠くなっていきます。こんな感じですね。
 
 えぇ、ダメな持ち方の見本です。力まずに軽く振ることは出来るのですけれどね。
 この持ち方をしますと、指揮棒を保持している部分が一点になりますので、棒が右手に対して遊ぶことがあります。そうです、揺れるんです。
 それが面白くて、わざと揺らして振ったこともありましたが、奏者の皆さんは見難かったでしょうねぇ、、、ということに今日気付きました。

 今日の本番前のリハーサルは壁一面鏡の部屋だったのです。奏者は鏡に背を向けて座りましたので、私は鏡に向かって指揮することになります。自分で自分の指揮姿を見ることが出来るのです。これは、勉強になるので良いことなんですよ。そこで、揺れる指揮棒は見難いということに気付いたのです。これは、目指すところのカッコイイ指揮ではないと。

 ちょっと調子に乗って、指揮棒を揺らした状態で右手を上下に動かしてみました。皆さんも、やったことありませんか? 鉛筆を摘んでゆらゆら上下に動かすというやつ。
 鉛筆が曲がって見えたように、指揮棒も曲がって見えたのです。

 そりゃあ、そんな指揮棒は見難いに決まっています。指揮棒は揺れない方が良いのです。

【参考文献】
おうちで指揮者 / ダン・カーリンスキー&エド・グッドゴールド著(齋藤純一郎 訳) / 音楽之友社 

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