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249.爆演のこちら側

2010.6.19


 前回、「どうしても聴きたいのだが入手できない。」といっていた、ヘルマン・アーベントロート指揮バイエルン国立管弦楽団演奏のブラームス交響曲第1番の収録された、ブラームス交響曲全集が入荷したというメールが届いたのは、15日の火曜日でありました。
 HMVでは絶版ということてキャンセル、タワーレコードでも大幅入荷遅れという事で、ほとんど入手は無理と諦めていたのですが、何とかタワーレコードでは入荷したということで、大変うれしいことであります。
 16日には配送され、早速聴こうと思ったのですが、入手がこれだけ難しかったので貴重品の様に思え、しばらく封を切るのを躊躇ってしまいました。

 

 輸入版ですが、帯(と言うのかな?→オビで良いらしいです)は日本語で書かれていて、ちょっとした解説があります。曰く、

 ファン待望、アーベントロートのブラームス全集。当盤は第1番を爆演として名高いバイエルン国立管で収録しております。ウィーン・フィルで言えば数少ない定期演奏会にあたるバイエルン国立歌劇場アカデミー・コンサートライヴで、ミュンシュも驚く情熱的な名演で広く知られたもので、終楽章など聴いていて元気が出ます、音質良好。(以下省略)

 発売元の方でも「爆演」と言っちゃってます。「聴いていて元気が出ます」と言うのもブラームスの交響曲ではまず有り得ない表現ですね。
比較に持ち出されているミュンシュというのも爆演系なのでしょうか。聴いたことが無いので分からないのですが。

 さて、このCDは2枚組みでありまして、1枚目には第3番、第1番が、2枚目には第2番、第4番が収録されています。ちょっと変なのは、1枚目の収録が第3番が先なのです。通常は番号の小さい順なのですが、第3番を先に聴かせたいという意図でもあるのでしょうか。

 では、第1番を聴いてみましょう。
第1楽章 ところどころ速い所はありますが、特に破天荒の様には感じないのですが、、、。まぁ、古い演奏にはありがちな程度かなぁ。
第2楽章 メロディーを強く歌わせているようですね。アンサンブルというよりソロ曲になっています。それでも笑えるというほどではありませんが。
第3楽章 多少速いかも。ピチカートの音が立ったいるなぁ。せわしない演奏といえばそうでしょうね。
第4楽章 これかぁ。 鈴木淳史さんのいうところの、

 最終楽章も佳境に入ると、その強烈なギアの切り替えに呆然となる。

 確かにこのテンポの変化はすごい。教習所に行って初めて車に乗り、アクセルの踏み加減が分からない運転の様な、急加速・急減速。

 ここまでやっちゃうのかとのけぞってしまうほどの下品な響きで金管がコーダを、文字どおり、ぶちかます。

 そのとおり、どうしてそんな音が出せるの? リズムは壊れまくっているし、指揮者が興奮してやりたい放題になっているのでしょうか。

 「元気が出る」かと問われると、うーん、、、脱力感はありますが、元気となると、、空元気?でしょうかね。

 なるほど、笑えるといわれれば笑えるが、、、、。前回も書いたように、そこまで感じることは無いのです。やはり私の耳は鈍いのでしょうか。
 ちょっと考えてみました。

 私の音楽活動の場は、吹奏楽です。吹奏楽といえば、アマチュアであり、コンクールであります。数多くの団体が様々な演奏を聴かせてくれます。その数はオーケストラの比ではないでしょう。そう、様々な演奏があれば、トンでもない演奏を聴くことも多くなります。常に妙チクリンな演奏に接しているのです。そして、学生時代より「一生懸命やっているのだから、下手であっても、他人の演奏を笑ってはいけない。」と教え込まれてしまっているのです。
 こんな感じてはないかと思います。私だけが鈍いのかどうかの説明にはなってないのですけれど。

 考えてみると、あのくらいのアゴーギク、ディナーミクは私も豊かな表現付けをするためにやってしまいますからね。
 もしかしたら、駒ヶ根市吹の演奏も爆演系に近い物になっているのかもしれません。困った物です、、、、あ、私の所為か。

【参考文献】
鈴木淳史 / 背徳のクラシックガイド / 洋泉社 新書y

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