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246.ロジャー・ノリントンを聴く

2010.5.30


 ロジャー・ノリントン指揮による演奏というと、ピリオド奏法によるベートーヴェン交響曲全集というのが、私の頭にあるほとんどの思いでありまして、その他の作曲家の曲の演奏など考えられないという思い込みがありました。それはとんでもない間違いであることは明らかなわけで、ベートーヴェン以外の曲だってもちろん演奏しているのです。実際に私は、ヴォーン=ウィリアムズの交響曲第5番をNHK交響楽団の演奏で聴いております。

 そんなわけで、先日HMVの通販サイトでおもしろいCDは無いかなぁと探していたところ、ロジャー・ノリントン指揮のCDが数枚あったのです。当然のことながら、シュトゥットガルト放送響のピリオド奏法での演奏です。ちょっと、意外な曲もあり、5枚まとめて注文してしまいました。
 それらが届きましたので、ざっと聴いた感想などを書いてみたいと思います。

 ・シューマン 交響曲第1番「春」/第3番「ライン」
 ・シューマン 交響曲第2番 / 第4番

 ピリオド奏法でのシューマンの交響曲が聴きたくて、ハノーヴァー・バンドのCDを探したのは記憶に新しいところです。結局は見つけられなかったのですが、ノリントンさんが録音していたので聴くことが出来ました。どうして早く気づかなかったんでしょう。
 シューマンの交響曲はオーケストレーションが上手くなくある程度の編曲をしないと聴けないというのが定説になっています。しかし、初演当時は否定的な意見は無かったようなのです。ところがその時代は楽器の改良が進み鳴りがよくなって行った頃なのでした。シューマンは当時の鳴りの良くない楽器の音を重ねることにより、ロマンテックなオーケストレーションをしたのではないかと思うのです。ですから、鳴りの良くなってきた楽器で演奏すると、必要以上に厚く重くなってしまったのではないかと思います。
 そこでノリントンさん指揮のピリオド奏法です。なるほど、厚く重くならずスッキリ聴こえます。第3番「ライン」などは一般的なモダンオケで聴くとこってりたっぷりの響きになって第2楽章以降は変化に乏しく退屈でつまらなくなってしまうのですが、軽快な演奏で輪郭がはっきりしています。シューマンのオーケストレーションはこうだったのかと理解できる演奏になっています。

 ・ベルリオーズ 幻想交響曲
 今でこそ壮大なオーケストレーションの代表ともいえる幻想交響曲ですが、意外と作曲年代は古くシューマンの交響曲よりも10年以上前なのです。ベルリオーズはありったけの楽器を集めてオーケストレーションをしたので、現代のオーケストラでも問題なく鳴るようです。ただし、現在ではあまり使用されていない楽器もいくつかあるようですが。
 そんな曲をピリオド奏法で演奏すると、貧弱な響きになってしまうのではないかと思ったのですが、そんなことはなくしっかりと鳴っております。輪郭がはっきりしている分グロテスクさが際立っているかもしれません。しかし、全体が軽い分ドロドロした感触は少ないです。

 ・マーラー 交響曲第1番「巨人」(花の章付き)
 シューマンの交響曲を編曲してしまった張本人の曲であります。この曲もオーケストレーションが派手で知られております。
 幻想交響曲と同様に、輪郭がはっきりし動きが軽快なことでダイナミックさを表現していると思います。

 ・ホルスト 組曲「惑星」
 さて、問題はこの「惑星」。私たちの感覚ではほとんど現代曲(現代音楽ではないけれど)のつもりでいると思います。さて、そんな曲をピリオド奏法で演奏するとどうなるか、、、。
 あーら不思議。ほとんど違和感がありません。何故だろうかと考えてみて思いつきました。
 これは吹奏楽の音だ。
 弦楽器がビブラートをかけないストレートの音のため耳に馴染んだ弦楽器らしさが減り、管楽器的な響きに近くなっているのですね。もともと管楽器を多用している曲ですので、吹奏楽みたいな音に聴こえます。吹奏楽でもよく演奏される曲ですから、違和感が無かったのですね。

 ベートーヴェンの曲などは弦楽器が主体で作られていますので、弦楽の響きが変わると全く別物になってしまっていたのです。なるほどねぇ。

 以上の5枚を今回は購入いたしました。

 ノリントンさんはそのほかにもいろんな曲のCDを出していまして、チャイコフスキーの交響曲も第5番、第6番が出ております。ねちっこくないチャイコフスキーというものがどんな物なのか、聴いてみたい気もします。次は、これを買って聴いてみましょう。

【参考文献】
金子健志 / こだわり派のための名曲徹底分析 マーラーの交響曲 / 音楽之友社

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