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234.暗譜が必要だ

2010.3.6


 さて、この駄文集も200を越え、毎週書くについてはネタに困る状態が続いております。書くネタを決めたところで、また困るのが、すでに書いてしまったネタだろうかということであります。「書いたような気がするなぁ、」というときは、検索という便利な機能で探すことは出来ますが、思いつく単語でいくら検索しても出てこないときがあります。「書いた記憶は有るのだが」と悩みつつ、200以上の駄文を斜め読みして行きます。それでも見つからないと、「裏ベー全編」の方か掲示板の方かと、更に探し続けることになります。見つかればよし(ということはそのネタでは書けない)、見つからなければ「前に書いたかもしれないけれど」と断りを入れながら書くことになります。
 次に困るのは、出典が何だったのか思い出せないことであります。大抵は岩城さんの「楽譜の風景」からなので、もう一度斜め読みをして「あった、ここだ」と見つけることになります。そう、そのように見つかれば良いのですが、こちらも見つからないと別の本を探し続けることになります。ネット検索に頼ることもありますが、なかなか見つかりません。立ち読みで印象的だった話などは、探し出すのは絶望的ですね。最終的に出典不明の胡散臭い話として書くことになります。
 大体そんなことで2~3時間を使ってしまうのです。

 という、前フリは今回のネタとは関係なく、つまりこのネタを書こうと思ってからすでに3時間が経過しているということを言いたいわけです。過去に書いたかを確認するとか、元ネタを探すということで。

 ここから今回のネタであります。
 最近になって、目が悪くなったなぁ、と強く感じる様になったのです。私の視力というのは、中学2年生までは両眼とも視力1.5でありました。中学3年生のときに教室での座席が悪かったおかげで両眼とも0.7以下まで悪くなり(決して勉強の所為ではないです)、高専に入学するに当たって眼鏡を作ったのでありました。以来30年間、視力は良くも悪くもならず、同じ度数の眼鏡を使用しております。
 2年ほど前から、至近距離や暗めの場所で物が見えにくくなり、「老眼が始まったということか。」と思っていたのですが、つい最近一層見えにくくなってきたのです。目の疲れ方も以前より激しく感じます。
 眼科の専門知識はないのでなんともいえませんが、どうも最近眼を酷使した所為ではないかと思えるのです。で、何に酷使したのかといいますと、思い当たることがあります。

 昨年の11月ですね。ベートーヴェン交響曲編曲のラストスパートとして「第九」の第1~3楽章をほぼ一ヶ月に亘り毎日数時間かけて作成いたしておりました。どうもそれ以来、老眼が進行したように思えるのです。特に暗いところで作業したわけでもありませんし、数年前のようなCRTではないLCDを使用していますので、眼への負担は少ないはずなのですが、やはり眼性疲労というのはかなりの物でした。まぁ、普通に老眼が進行しただけともいえますので、本当かどうかは分かりません。

 そして、ついに困ったことが起きたのです。吹奏楽団の練習である曲を指揮したとき、スコアの細かいところが見えなかったのです。そのスコアは、B5サイズ(通常はそれより大きいA4か、更にA4より一回り大きい菊倍版)であり、30段近いフルスコアでした。
 その曲は途中で変拍子が入るのですが、拍子記号が読めません。当然、音符一つ一つなどは無理です。以前この曲を演奏したときは全く気にならなかったのに、恐ろしい事です。

 ということを実感して思い出したのが、ある指揮者が近眼ゆえに暗譜せざるを得なったというお話。でもって別の指揮者に有る人が「あなたは暗譜で演奏しないのですか?」とたずねたところ「わしは譜面が読めるからね。」と答えたという笑い話なのですが、今読み返してみると笑い話になっていませんね。笑い話にするには、「あいつは譜面が読めない(理解できない)から暗譜するのであって、私は譜面が読める(理解できる)から暗譜しないのだ。」とならなければならないでしょう。
 はい、それでもって元ネタ探しです。

 少々時間が掛かりましたが、やはり岩城さんの本にありました。
 近眼の指揮者の話は、「楽譜の風景」の129ページ。近眼の指揮者というのはトスカニーニのことでした。楽譜を3センチとか7センチとかの至近距離でないと見えなかったそうで、それゆえ指揮するときには暗譜せざるを得なかった。大変な記憶力であるというお話。岩城さん自身も暗譜で指揮する様になったのは老眼がきっかけだと書かれています。
 「わしは譜面が読める」の話は、「指揮のおけいこ」(文春文庫版)の105ページから。

 あるジャーナリストがインタビューで、神様 (筆者注、ハンス・クナッパーブッシュのこと) に尋ねた。
「マエストロは、何故あのカラヤンのように、暗譜で指揮なさらないのですか?」
「ハハハ……、わしは楽譜が読めるからのう」
 全盛期のカラヤンへの皮肉として、有名な話になった。


で、ありました。で、そのあとでまたトスカニーニの話が書かれています。
 どうも私は、二つの話を混ぜてしまっていたようです。この話、今まで書いてないですよね?

 そういうわけで、私も譜面が読み難くなり、暗譜の必要性が高くなってきました。ただし、巨匠たちのような真っ当な暗譜をする能力はありませんので、怪しげな暗譜になるでしょう。

 まぁ、とりあえずの対策としては、大きなサイズのスコアを使えばいいのですけれどね。 あ、眼鏡を代えてもいいのか。


【参考文献】
指揮のおけいこ / 岩城宏之 / 文春文庫
楽譜の風景 / 岩城宏之 / 岩波新書

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