随分以前になりますが、ハチャトゥリアンの作品のCDを購入いたしました。収録曲は、 バレエ組曲「スパルタクス」(全4曲) バレエ組曲「ガイーヌ」(全5曲) 以上が、1962年のハチャトゥリアン自身の指揮によるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏。それにプロコフィエフの バレエ組曲「ロメオとジュリエット」(全6曲) こちらが、ロリン・マゼール指揮クリーヴランド管弦楽団による1973年の録音というものでした。 最初はハチャトゥリアンの2つの組曲でLPレコードで発売された物が、CD化されるに当たって収録時間に余裕が出来たのでプロコフィエフを加えたという感じです。 ロシア物バレエ組曲集といったCDであり、曲数は全部で15曲になります。それぞれの曲にはバレエの情景に合わせたタイトルが付けられております。有名なところでは、「ガイーヌ」の「剣の舞」「レスギンカ舞曲」といったものがあります。「ロミオとジュリエット」の中であの携帯電話会社のCMで有名になったのが「騎士たちの踊り」という曲ですね。 「スパルタクス」はここ数年になって吹奏楽で演奏されることが多くなってきた様に思いますが、このCDを買ったころは殆ど知られていなかったですね。 さて、その「スパルタクス」の2曲目のタイトルですが、 「エギナのヴァリアシオン - バッカナーリア」 Variation of Aegina and Bacchanalia であります。エギナというのは登場人物の名前でありまして、ヴァリアシオンとは何のことか分からず、バッカナーリアはバッカスから来た酒神関係の宴が何かだろうな、と思っておりました。バッカナーレに似ていますからね。まぁ、そういう曲のタイトルだと思って特に気に留めていないでおりました。 ところがある時、気が付いたのです。 ヴァリアシオン… Variation …ってヴァリエーションのことではないでしょうか。スペルは同じです。ヴァリエーションというのは日本語にすれば変奏曲ですから、あの曲のタイトルは訳せば「エギナの変奏曲 - バッカナーリア」になるんだと思ったのです。 レコード会社の人がヴァリエーションも知らずにヴァリアシオンなんて誤訳したんだ、と考えたのです。俺って頭いい。 また何年かして、別のCDを買いました。というのが、またしてもハチャトゥリアンなのですが、バレエ音楽「ガイーヌ」全曲(原典版)という2枚組です。 このCDの中にも曲のタイトルに、「ヌネーのヴァリアシオン」「アルメンのヴァリアシオン」「ガイーヌのヴァリアシオンと終曲の踊り」など、ヴァリアシオンが3つもあるのです。先のCDとは別のレーベルですから、レコード会社の誤訳という可能性はなくなってきますよね。 さて、ヴァリアシオンが誤訳でない、変奏曲とは別の意味、となるとどういう意味になってくるのでしょう。と、疑問に思ったのですが、特に興味があるわけでもなく調べないでおりました。 最近になって、いろんなサイトを眺めているうちにヴァリアシオンというのはバレエに関係した言葉なのではないかと思われるような記述を見つけました。 はい、そしてようやくここに来てネット検索してみようかという気になったわけです。結果は、参考文献に挙げた、社団法人日本バレエ協会のバレエ用語辞典をご覧になってください。 ヴァリエーションとも言うようで語源は同じように「変化、変形」であり、バレエにおいてはソリストによる一人の踊りのようです。なるほどそういうことでしたか。レコード会社の誤訳などととんでもない勘違いをしておりました。 しかし、このバレエ用語辞典を見てみると、音楽用語と同じ単語でバレエ独特の意味になるものもあるのですね。またひとつ、少しお利口になったような気がします。少しですけれどね。 【参考文献】 社団法人日本バレエ協会 バレエ用語辞典 |