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226.分からんのです【解答編】

2010.1.9


 ドヴォルザークの交響曲第1番第1楽章で、“ Vi - de の意味が分からんのですと前回書いたわけですが、正解を耳打ちしてくださる方もいず、今もって分からんのですが、このスコアを見ていてなんとなく分かったことがあります。

 このスコアには今まで見たほかのスコアに無い特徴があるのです。それは、次の譜面を見ていただくと分かると思うのですが、



括弧の表記が非常に多いのです。“”、“ ” のことです。この部分では2ndヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのPP に付いています。
 通常、このように譜面上に括弧表記する場合は、
「別に、わざわざ表記しなくても、ちゃんと見れば分かることなんだけど、紛らわしいから、分かりやすくするために括弧で表記しておきますね。」
という感じの親切のためにすることがほとんどです。ただこの譜面の場合、PP は表記しなければ分かりませんので、親切表記ではないことになります。
 では、その他に括弧表記する場合は有るのかというと、校訂者が校訂の際に判断に迷い最終的な決定をしなかった場合です。同じベーレンライターでジョナサン・デル・マーが校訂したベートーヴェンの交響曲全曲のスコアには、そのような括弧がいくつかありました。この譜面の場合も、PP の指示が有るのか無いのか判断が付かなかったことと解釈できます。が、多数決的に考えたら1stヴァイオリンのPP をなしにしちゃいそうですね。まぁ、1stヴァイオリンに書いてあったのなら、他のパートにも付くべきだろうと判断しようとしたのかもしれません。

 ところが、別のページを見ていてオヤと思ったところが出てきたのです。次の譜面ですが、



1stヴァイオリンのナチュラルについている括弧は親切表記に当たりますが、2ndヴァイオリンの八部休符に括弧が付いていますよね。これは明らかに休符が無ければならないところですので、判断に迷うことはありません。何故、括弧が付いているのでしょうか。
 ここで考え付いたのは、校訂時に正しく直した所を表しているのではないかということです。(別に正しく直したんだったら括弧は要らないと思うのですか、、、。) 多分、そういうことです。
 となると、私が括弧をつける場合のその2としてあげた、「判断に迷った場合」というのは、私の勘違いですね。そういう使い方をしている人がいないとは言い切れませんけれど。

 さて、それでは前回の“ Vi - de ”をもう一度見てみましょう。しっかりと括弧が付けられています。ということは、校訂の結果「384小節は無いのが正しい」と判断されたことになります。そこで、小節をカットする記号というのはありませんので、“ Vi - de ” を用いたのではないでしょうか。

 そんな不要な小節なら削除してくれよ、と思ってしまうのですが、校訂の常識なのでしょうかね。また一つ、知らなかったことが分かった様な気がしました。譜面っていろんな事があるんですねぇ。

【参考文献】
ドヴォルザーク交響曲第1番スコア ベーレンライター版 TP501

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