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225.分からんのです

2010.1.3


 前回は、「最後の挨拶」としましたので、今回は「最初の挨拶」として始めようと思ったのですが、特に思いつくネタも無かったので普通に譜面を見ていて疑問に思ったことを書くことに致します。

 現在ドヴォルザークの交響曲第1番ハ短調「ズロニツェの鐘」第1楽章の編曲しているところであります。第1番第1楽章を編曲しているからといって、次はドヴォルザークの交響曲を全部吹奏楽に編曲しようなんてことは考えておりません。ドヴォルザークの交響曲は第1番~第6番は殆ど知られてはいませんが、なかなかいい曲ではあるのです(そういえば「のだめ」で第5番が使われましたね)。ただちょっと、編成も大きくなって曲も長くなってきていますので、やりきる根気が無いかなぁというのが正直なところです。あと、学生時代にある先輩に「ドヴォルザークの弦の響きは吹奏楽では再現できない。」と言われたのが呪縛になっているかもしれません。まぁ、どんな曲でも弦を管で表すのは完全には出来ないことなのですけれど。
 それは良しとして。

 この曲の譜面の中で分からない表記があるのです。私は、譜面で分からないことがあれば、楽典なり音楽語辞典(ネット上ですが)で調べることにしています。それでも、分からないのです。いや、意味は分かるのですが、どのように演奏すれば良いのかが分からないのです。次の譜面をご覧下さい。



 383小節目から387小節目です。代表してヴァイオリンパートだけ抜き出しています。384小節に
Vi - de
と、あります。(これは、ヴァイオリンパートだけにではなく、曲全体への指示です。)
 さて、これはどういう意味でしょうか。

 「演奏のための楽典 正しく解釈するために」 (菊池有恒 著)によれば、
 ヴィデ
 Vide は,「……を見よ」の意味で、普通は Vi - de あるいは、譜例のように, v…i…d…e と,単語を分割して書くようになっています。
(P86)

 と、書かれています。 「」というのはラテン語のことですね。で、「……を見よ」という意味は良いのですが、具体的に何を見れば良いのでしょうか。

 もう一冊、「バンドメイツのための吹奏楽小事典」 (小澤俊郎 編)を見てみましょう。

 〈見よ〉の意で、vi --- de のように離して書き、vi- から -de の場所に移って演奏する。(P13)

 こちらの方が、具体的ではあります。しかし、この曲においてはどのように演奏すれば良いのでしょうか。
 前者では、小節の反復に関する略記法の項で書かれていますので、後者の言うところの「ここから、ここへ飛べ」というような意味かもしれませんが、この曲のこの部分は反復などはしていませんので、解釈ができません。
 また、譜面を見るとちょっとおかしな所があります。383小節の最後の八分音符、Cの音にタイが掛かっていますが、384小節の最初の音はEですのでタイは掛けることは出来ません。逆にこのEの音にも前の小節からタイが掛かっていますが、これも同じように掛けることは出来ません。
 382小節から384小節へ、とか、383小節から385小節へ、ならばタイは有効になります。ということは「383小節か384小節のどちらかを跳ばして省略する」という意味でしょうか。しかし、383小節には何も指示が無いので、跳ばすとしたら384小節だと思います。が、だとしたら最初から書かなければいいだけの話だと思うのです、、、。

 では、CDを聴いてどのように演奏している確認してみます。ズデニェック・コシュラー指揮スロヴァキア・フィルハーモニックオーケストラ(BRILLIANT 99565) の演奏です。
 確かに、どちらか1小節、跳ばされています。ちなみに383小節と384小節との違いは、384小節に1番クラリネットと3番トロンボーンが加わっているだけで、他のパートは同じ音です。フレーズから考えて384小節をカットするのが妥当でしょう。
 ただ、この演奏、その他にも指示の無いところで数箇所カットされているところがありますので、譜面の指示としてカットしたのではない可能性もあります。(じゃあ、他の演奏のCDも買わないといけないなぁ。)

 というわけで、なんとなく分かったような、でもスッキリしませんねぇ。どなたかお分かりでしたら、そっと耳打ちしてくださいませんでしょうか。
 よろしくお願いいたします。

【参考文献】
ドヴォルザーク交響曲第1番スコア ベーレンライター版 TP501
演奏のための楽典 正しく解釈するために / 菊池有恒 / 音楽之友社
バンドメイツのための吹奏楽小事典 / 小澤俊郎 編 / 東亜音楽社 

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