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217.振りの反省

2009.11.8


 では、今回の演奏会で最後まで焦りました、私の振りの未熟さを反省してみましょう。今から考えるとなんて事はないのですけれどねぇ。

 場所は、『カルメン』から「ハバネラ」最後の二小節です。組曲版、アルト独唱版、両方になります。まず組曲版から。
 譜面はこの様になっています。そのほかにもパートはあるのですが、動きがあるのが、このアルトサックスのパートであります。



 2/4拍子で四分音符=72のテンポですが、この最後から2小節目はゆっくり歌って、最後の小節で元のテンポに戻り曲が終わります。2/4拍子ですので指揮は2つ振りですが、ゆっくりになる最後から2小節目は八分音符一拍として4つ振りをします。
 まずこの4つ振りにするというところが、奏者の方に上手く伝わりませんでした。自分で歌いなから「このテンポになって、このように4つ振りしますよ。」と何回も言っていたのですが。譜面にかじりついている所為なのか、テンポの変化になかなか反応してもらえませんでした。
 テンポの変化を理解していただいた次の問題は、2拍目(指揮の上では3拍目)の付点八分音符のフェルマータの後の32分音符の三連符の出るタイミングです。4つ振りで勘定したときの4拍目の裏(1/2拍後)になるので、フェルマータの後に4拍目の頭を指示すれば裏は簡単に取れるはずなのですが。
 実は、私は最初に譜読みを間違えておりまして、この三連符の出は4拍目の裏の裏(3/4拍後)と思っていたのです。2つ振りだとすれば2拍目の裏の裏なので、それと勘違いしていたのでした。そんな感じて1拍余分に振っていました(まぁ、その一拍は予備拍だといえば、それで済んだのですが)。この振り方で、一旦は奏者の方に憶えてもらったのですが、私としてはどうもしっくり行かないのです。そこで譜面を見直し、間違いに気付き、振り方を変えたのです。これが本番の前日でした。
 譜面上で拍の取り方を表しますとこうなります。



 1拍、2拍は普通に振って、3拍目を振ったところでフェルマータで棒を止めます。次の動き出しの指示は4拍目の頭を振り、音の出は「」で表した4拍目の裏です。 (ゆっくり目のテンポでは、正確に刻むために拍の裏を「ト」と言って表現します。イチ、ト、ニ、ト、サン、ト、シ、ト、・・・というように。ちなみに三連符は「タリラ」と言って3つの音を表したりします。)
 この4拍目の裏に三連符を嵌め込み、最後の小節の1拍目を振れば問題ないはずなのです。4拍目の頭が三連符の予備拍になるということです。棒の動きで表すと次の図になります。



 奏者の側から見れば左右対称になりますね。
 ちゃんと考えてみればシンプルなのですが、最初から出来ていなかったので、奏者のみなさんを混乱させることになりました。本当は譜読みなんかしなくても初見で瞬間的に出来なければいけない程度のことなのですが。あぁ、未熟です。
 まあ、本番では何とか間違えることなく演奏をすることが出来ましたので、良しとさせてください。


 さて、次にアルト独唱版の方。譜面は次の様になっています。



 組曲版と同じ様に演奏するのですが、おもしろいことに譜面がちょっと違っています。先程の3拍目の音符が組曲版では付点八分音符ですが、こちらはただの八分音符になっています。何故かは分かりませんが、組曲版を作ったホフマンが変えたかったのでしょう。
 譜面は上の段がアルト独唱です。下2段が伴奏で、ここではピアノ譜で表していますが、演奏では吹奏楽で行っています。

 最後から2小節目は、指揮者は1拍目の頭を振るだけで、後は独唱の方に自由に歌っていただきます。どこで延ばそうが、どこで切ろうが、自由です。指揮者が指示することではありません。
 今回の高山さんの場合、最初の16分音符を延ばし、3つ目の16分音符の後で切って、2拍目の八分音符を延ばす(フェルマータ)という歌い方でした。
 指揮者は次の指示として最後の小節の頭を振ることになります。
 ここが問題なのです。最後の小節を振るためには予備拍が必要ですが、そのタイミングはアルトが歌っているのです。独唱と伴奏を合わせるためには、三連符の頭を予備拍にして振ればよい(三連符がゆっくり歌われた場合は、三連符の3つ目の音を予備拍にします)のですが、その前のフェルマータがどれ程延ばされるか分かりません。つまり、予備拍を振り出すタイミングが分からないのです。
 フェルマータで延ばした音を一旦切ってもらえれば、そこでタイミングを取れるのですが、高山さんに伺いますと「切らない。」とのことです。私の方で三連符の入りのタイミングをつかまなければなりません。フェルマータがどれだけ延びるか予め憶えておいて、高山さんの様子を見つつ振ることになります。
 合わせの初日では、高山さんにはお疲れのところ数回歌っていただき、とりあえず通せることにはなりました。しかし、すっきりはしません。

 その後は、手持ちのビデオ、DVDでプロの指揮者がどう振っているか調べてみました。
 まず、『題名のない音楽会』で佐渡裕さんと林美智子さんが演奏したもの。
・・・分かりません。予備拍がない? オーケストラ全員でアルト独唱と合わせているということでしょうか。息を合わせるってやつですね。これが出来ればいいのですが、そこまでのテクニックはちょっと、、、
 次に、ハイティング指揮の1985年8月、グラインドボーン・フェスティバル・オペラでの演奏。カルメンはマリア・ユーイングです。しかし、ホール演出(劇場ではない)のためオーケストラや指揮は映っていません。ということで分かりません。
 3つ目は、クライバー指揮の1978年12月のウイーン国立歌劇場でのライブ。カルメンはエレーナ・オブラスツォワです。こちらも指揮は映っていないので分かりません。また、アルト歌手のアクションからタイミングも取れません。

 ということで、映像から読み取ることは出来ませんでした。困りました。しかし、アルト独唱と伴奏を合わせなければならないということには変わりありません。こうなってしまうと、初日の練習のようにフェルマータがどれだけ延びるか憶えるしかありません。練習の録音を何回も聴いて憶えることにしました。それでも、本番になれば気分によって延び具合が変わることもあるでしょうから安心は出来ないのですけれど。あとはリハーサルでどこまで詰められるかです。

 ところが、前日当日のリハーサル共に時間が取れず、一回ずつ通しただけでした。「エイヤッ」っと演奏して上手く行ったので、まぁ、それで良しと。要は開き直りです。

 本番もそのまま上手くいってしまいました。
 開き直りと度胸が、最後に物を言った感じです。

 でも、本当は高山さんが合わせてくれたんだと思います。私もまだまだ勉強しなければなりませんねぇ。

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