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204.コンクールで聴きながら考えた

2009.8.10


 現在の私にとって吹奏楽コンクールは、所属している駒ヶ根市民吹奏楽団が出場しませんので、聴くだけの行事になっております。しかも、毎年必ず聴きに行くといった積極的なものでなく、近場のホールで都合が合った時に行く程度のものです。ですので、数年に一回の割合となっています。

 聴きに行くとなると、ほぼ一日仕事になるわけですが、丸一日は結構辛いので半日程度になります。一団体の演奏時間が12分ですので一時間に四団体、3~4時間聴くと十数団体の演奏を聴くことになります。
 そういった長時間ですので、聴きながらいろんな事を考えます。時間を追ってどんな事を考えているかを書いてみたいと思います。

 まず聴き始め、一団体目。このコンクール全体のレベルがまだ分かりませんので、大抵上手く聴こえます。「こんな演奏が出来るんだったら、楽しいコンサートとか作れるよなぁ。」などと感心しています。きっとその団体なりの苦労もあるとは思いますが、それが分からないので勝手に羨ましく思っているのです。
 「コンクールなんかしなくてもいいのになぁ。」とも思います。以前自分もコンクールに参加していた頃は、いい賞を取りたくて必死になってやっていたわけですが、先に書いたとおり今では参加していませんので、半ば諦めの境地のようなものだと思います。

 それから全体を通してですが、指揮者がどんな振り方をするのかは、注目しています。かっこいい振り方とはどんなものかを憶えようと、これは必死です。一般の部などでプロの指揮者が振る場合などは食い付いて見ています。

 二~数団体目。耳も慣れてきて、なんとなく全体のレベルが分かってきます。そうなると、演奏の良くないところなどがよく聴こえてくるようになります。音程、アインザッツが合わないところ、打楽器・金管がうるさいところ、PPがしっかり鳴らないところ、等々。
 大体は課題曲の冒頭の鳴った瞬間におおよそのレベルが分かってしまいます。響きのクリアさの違いでしょう。
 それから自分の中で順位付けが始まります。「先のほうがここよりいい音してたよなぁ。」とか思いながら。

 そのうちに、演奏者の数が気になってきます。大人数の方が響きにも豊かになりますし、細かなミスが聴こえにくくなっています。三十数人程度の編成や、それ未満だと、個人の技量がそのまま分かってしまいますし、音程のズレも気になり易いのです。そんな少人数でもきれいな響きをさせて、バランスの取れたいいサウンドを作っている団体を聴くことがあります。で、そこで思うのです。「こんなにいい演奏しても、いい賞にはならないんだよなぁ。審査員がどう考えるか分からないけど、大人数の編成の方が良く聴こえるんだろうなぁ。」と。一人で勝手に、かなり残念な気分になっていきます。

 演奏が進み、代表を取るような有力団体が登場します。さすがにいいサウンドがします。地力があるというのでしょうか。特に中学校の場合など、楽器を持ってから1~2年という人も多いでしょうから、その短期間にどれだけの練習をしたのか、相当キツイ練習をしてるんじゃないかと想像して、「中学生にそこまでやらせるか?」などと、多分にヒガミの入った感想を持ってしまいます。まぁ、しかし上手いことは上手いので、満足な気分になってはいます。

 このあたりまで聴いてくると、いろんな分析を始めています。上手くない団体は、どこが上手くなくて、どうしてそうなっているのか。いい音を出すためにはどうするべきかなど、あれこれ考えます。そして、自分のいる吹奏楽団にどうやって活かすかですね。ただし、メモなど取らず、頭の中だけで考えているだけなので、忘れてしまうことも多いのですけれど。

 自分が関係した団体が演奏するときなのは、それはもう、いかにいい演奏なのかというところを必死になって考えています。落ち着いて考えれば、聴こえているとおりの演奏なのですが、ついつい力が入ってしまいますね。そりゃ、いい賞を取ってもらいたいですから。

 最後のあたりには賞の予想をしております。金、銀、銅と。

 このようにして3~4時間は過ぎて行きます。

 そして、最後の表彰式。結果発表。予想が外れていると、「審査員は何を聴いているのだ。」とこれまた勝手に憤慨していたこともありました。さすがに最近はそうは思わなくなったのですが。全く同じ基準で多くの団体の演奏を評価することは不可能ですから、そういった食い違いは良くあることですよね。コンクールの難しさを実感するのでした。

 と言うように半日間たっぷりと音楽を聴いて帰宅するのでありました。いいサウンドを思い出して、あんな音を作りたいなぁ、などと考えながら。

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