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195.指揮棒

2009.6.7


 とりあえず私は、所属するアマチュア吹奏楽団で指揮をしております。メンバーの皆さんはそれぞれ楽器を持って練習に参加されますし、私も自分の楽器(Euphonium)を持っていくのですが、ちょっと荷物が多いなぁ、なんていうときには、指揮者の楽器しか持って行かない事もあります。指揮者の楽器というのは、もちろん指揮棒のことです。まぁ、音を出すわけではないので楽器というのはおかしいかもしれませんが。

 この指揮棒という代物、材質が木製のものとグラスファイバー製のものがあります。最近、買ったことがないので現在の価格がどれ程するかわかりませんが、私が持っているものは、木製のもので550円か650円、グラスファイバー製のものが1500円であります。木製の指揮棒の100円の違いは、塗装が透明で木の色のままか、白い塗装かの違いです。白い方が100円高かった。現在は1000円位するのでしょうか。
 グラスファイバーというのは、ガラス繊維のことですが、指揮棒でグラスファイバーというときは、樹脂にガラス繊維を入れものになります。
 グラスファイバー製の指揮棒というのは、木製に比べ強靭であり、折れない、細くて軽いという特徴があります。

 というわけで、私は木製の指揮棒とグラスファイバー製の指揮棒、両方を持っております。どっちか一方でいいような気もしますが、大雑把ですが使い分けをしております。
 どのように使い分けているかというと、普段の練習のときなどは木製です。テンポを示すときなど、指揮棒で譜面台をコツコツ叩くわけですが、グラスファイバーだと軽すぎるため大きなコツコツという音が出ないのですね。ですから、練習のときは木製。そうやって使っているので、白いものはその部分の塗装が剥げて来て、そのうち折れます。折れたところはささくれてしまうので、ナイフで削って形を整え、再利用いたします。まぁ、だんだん短くなっていくわけです。

 一方、グラスファイバー製は本番用ということになります。多少でも軽い方が疲労が少ないかなぁ、とか、本番は高価な指揮棒を使おう、などと邪な考えでおります。

 高価といえば、指揮棒ケースというものが欲しくなり楽器屋さんに見に行ったことがあるのですが、その値段が5,000円位しており、「1500円の指揮棒よりはるかに高いではないか。」と思い買わずに帰って参りました。なので指揮棒ケースはグラスファイバーの指揮棒に付いてきたプラスチックの筒のままです。ちゃんとした指揮棒ケース、どなたかプレゼントしてくれると非常にありがたいです。

 話を元に戻します。
 このグラスファイバー製の指揮棒ですが、どうも問題があるようです。一番判りやすいのが、岩城宏之さんが「指揮のおけいこ」の中で書かれていることです。
 指揮棒というのは、人を怪我させる凶器になりうるのです。トスカニーニの指揮棒が飛んで行き、第二ヴァイオリン奏者の目に刺さり失明させてしまったということが書かれています。また、ご自身も何回か手や頬や左目のすぐそばを突いたことがあるようです。で、その時は木製であったがために指揮棒の方が折れ、怪我をせずに済んだと書かれております。
 その後、楽器製造業者がナントカカントカプラスチック(岩城さんはそう書いていますが、多分グラスファイバー製でしょう)製の指揮棒のサンプルを持ってきて「絶対折れません」と言うのを「危険極まりない」と言って受け取らなかったそうです。
 以前、私が東京に住んでいた時に「指揮のレッスンを受けたいなぁ」と思い、ネット検索で見つけたある指揮者教室でもグラスファイバー製は禁止、とされていました。

 私も、振っていて左手や譜面台に指揮棒が当たり飛ばしてしまうことがあります。大抵の場合はバトンのようにくるくる回って飛んでいきますが、まっすぐに飛んでいったら、やはり危険でしょうね。

 ただ、ちょっと私が思うに、トスカニーニの例(その時代にはグラスファイバー製はなかったと思いますけど)でもあるように木製であっても刺さることはあるのですよね。刺さってから折れちゃった場合、折れた先が抜けなくなることもあるんじゃないでしょうか。グラスファイバーなら折れずに抜くことができる。どちらにしろ大怪我ですが、木製の方が重症になる場合もあるのでは?と思ってしまいます。
 現在でも、楽器屋さんへ行けばグラスファイバー製の指揮棒は多数売られていますので、クラスファイバー故、大事故になったという事はないのでしょうかね。

 ともあれ、岩城さんが強く否定しているからなぁ。現場の意見と言うのは大切です。
 まぁ、グラスファイバー製は細いので、木製に比べて演奏者から見難いかな、という心配もあります。私も今後使うのは木製の指揮棒だけにしたいと思います。

 でもなぁ、今もっているグラスファイバー製の指揮棒、、、以前、女の子にプレゼントしてもらったものなんだよなぁ。

【参考文献】
指揮のおけいこ / 岩城宏之 / 文春文庫

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