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187.パート譜から編曲を考える

2009.4.12


 このサイトにおいて、今まで私は編曲の完成をスコアが出来上がった時点としておりました。パート譜の作成は、演奏に使用する目処が立ったか、依頼があったときのみです。そのパート譜も、「読めればOK」程度の状態であったことを、最近思い知らされました。

 まずは、ここでもう何回も書いていますが、譜めくりが出来ないということ。3ページ以上になるパート譜は演奏中に譜めくりと言う行為が発生します。2ページまでであれば譜面台上に広げられますが3ページとなりますと、どうしても譜めくりが必要になります。譜めくりをするためには一旦演奏を中断せねばならず、そのためにはあるまとまった長さの休符が必要ということになります。曲のテンポによりますが、2小節以上の休符が欲しいところです。それがページの終わりにある必要があります。

 先日作成した「カルメン」組曲などは、その点をよく考えてパート譜を作ったつもりでした。それでも問題は起こったのです。
 やはり2ページ以上に亘り、まとまった休符の無い状態は発生しました。譜めくりが出来ないのです。伴奏をしている弦楽器のパートで延々と続いているようなところです。
 オーケストラの弦楽パートはプルト(譜面台の意味)といって、2人でひとつの譜面を読んでいます。譜めくりの場合は、順位の低い方の奏者がすることになっています。休符で無い場合は、演奏を一旦止めて行います。(と言うことは、その瞬間そのパートの音量は半減することになりますね。)
 吹奏楽でも、2人でひとつの譜面を読むようであれば可能ですが、一人でひとつの場合が多いのでしょうね。私の所属する楽団は一人一本譜面台を立てていますね。

 では、まとまった休符が必要となるパート譜で2ページというのは、何小節くらいになるのでしょうか。手元にある譜面で確認して見ましょう。
 Gustav Holst 作曲 Charles Sayer 編曲 Mars the Bringer of War from The Planets / G.SCHIRMER,Inc.版 です。まぁ、ホルストの「火星」ですね。音符が多いと思われるフルートと1stクラリネットを見てみます。
 フルートの場合、1ページあたり50小節(大休符は1小節としてカウント)ありました。1stクラリネットの場合、やはり1ページあたり40~50小節あります。ということは2ページで100小節の内にまとまった休符が必要ということになります。

 更に、今回黒一点さんからの指摘されましたのが、ブレスのタイミングと疲労についてでした。やはり管楽器の演奏において長い小節連続で吹き続けるというのは、非常に疲労するとのこと。このあたりは考えがなかったと言わざるを得ません。
 かつて、あるブラスバントのコンサートにエキストラで参加したときの譜面は、一曲中に休符がほとんど無いものが多く、非常に疲労しましたが「譜面とはこういうものだ。」と思っておりました。
 実際に、ブラスバンドの方が吹奏楽の譜面を見ると「休みが多い」と感じるようです。逆にオーケストラの管楽器の方が吹奏楽の譜面を見ると「休みが少ない」と思うそうです。

 そういった経験から、特に意識的に休符を設けるという考えは無かったのです。
 オーケストラ原曲で弦楽器が演奏を続けていて音色が変わらないのに、吹奏楽に編曲した場合は、同じところで楽器が変わって音色が変わってしまい違和感が生じるのではないかという、考えもありました。
 しかしながら、やはり1ページの内にまとまった休符があるようにするのが良いのでしょう。

 これからは、こういったことも考えて編曲しなければならないと実感しております。パート譜を作成する前にチェックしなければなりませんね。

 ここのところ『第九』第4楽章のパート譜を作成しておりましたが、弦楽器を移し変えたパートは、軒並み3ページ連続演奏の箇所がありました。これは大変拙いことです。改訂作業をしなければなりません。まぁ、そのうちに、、、。5月の連休の仕事かなぁ。

 ちょっと考えてみたのですが、ラヴェルの『ボレロ』。スネアドラムは15分間叩きっぱなしです。疲労はもちろん、譜めくりはどうしてるのでしょうか。同じことの繰り返しなので、暗譜が出来ないことも無いとは思いますが。リピート記号で書かれていて2ページに収まるようになっているのかしら。些細な疑問であります。

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