先日のコンサート前に、ふらっと入った書店の新書コーナーで見つけた本を2冊紹介したいと思います。最近ますます読書量が減っておりまして、「読んだ本から」と言いつつ、読んだすべての本になります。 しばらく前に、所属の吹奏楽団の方と飲んだときに、「どんな本を読んで勉強すればいいんですか?」と訊かれ、「勉強はしなくていいから、本屋に入って、面白そうだと思った本を読めばいいんですよ。」と答えました。「それが分からないんですよぉ。」って感じで、タイトルからは面白いかどうかはわからないということでしょうか。ということで、タイトルから面白そうな本。 笑えるクラシック -不真面目な名曲案内- / 樋口裕一 / 幻冬舎新書 私も、このようなタイトルには惹かれてしまうのでして、知られていないエピソード、笑える話などがあるのを非常に期待してしまいます。 内容は、【第1部】実は笑える名曲、【第2部】笑えるオペラ、【第3部】笑ってしまう名曲、という構成。さて、期待したような面白い話はあるのでしょうか。 【第1部】は、「第九」、「ボレロ」、「英雄の生涯」(R.シュトラウス)、交響曲第7番「レニングラード」(ショスタコーヴィチ)の4曲にスポットを当てます。が、まぁ、「クラシックは敷居が高く真面目に聴かなければならないと思われていますが、実はこんな背景があるですよ」という解説でした。正直言って、私にとっては新しく知り得たことはないなぁという感じで、取り立てて面白いという話はありませんでした。 【第2部】のオペラの部は、更にイマイチ。元々オペラと言うのはバカバカしい筋のものが多いので、それを笑えますよと言われても。つまり、落語のあらすじを書いているようなものでした。(ちょっと脱線しますが、今で言うと人種差別、セクハラ、不倫不貞といった題材が多く、真面目に考えたら上演できないんじゃないか、と誰かどこかで書いてましたね。) 気になったのは、モーツァルトの『魔笛』のストーリーが途中から善玉と悪玉が入れ替わってしまって謎だ、とおっしゃっていること。この件は、青島広志さん(作曲家の発想術(177P) / 講談社現代新書)によれば、 かなり知られた話だが、モーツァルトと台本作家兼興行主のシカネーダーを商売敵に回すオペラ団が『魔法のチター』というよく似た筋の作品を先に上演してしまったというものだ。あわてたモーツァルト側は、すでに作曲していた三分の一まではそのまま残し、それ以降は新しく作り直された筋によって何とか完成させたのである。 そのおかげでストリーはとんでもない物になっているということであります。ウィキペディアの『魔笛』の項では「そういう説もある」程度にとどめているのですが、この説に触れていないということはご存じなかったのかな? と疑ってしまいます。 更に【第3部】。名曲ということで17曲があげられていますが、少なくとも一般的に認知されているのは、贔屓目に見て6曲でしょうね(私の見識不足かな?)。あとの曲はどちらかと言えば珍曲の部類でしょう。 ということで、タイトルほど笑える本ではありませんでした。まぁ、タイトルの割には真面目な本といったほうが良いでしょう。 さて、もう一冊 夢見るクラシック 交響曲入門 / 吉松隆 / ちくまプリマー新書 この本は良いです。クラシックに縁のないような女子高校生に交響曲の世界をレクチャーしていくという形式。交響曲にもいろいろな成立の仕方、背景があることが、堅苦しくなく分かりやすく解説されているのがすばらしいです。交響曲のみならず音楽の成立についても知らないうちに教え込まれてしまうところが上手いところです。 題材として上がっているのが、 ベートーヴェン 交響曲第5番『運命』 シューベルト 交響曲第7番『未完成』 ベルリオーズ 幻想交響曲 マーラー 交響曲第1番『巨人』 チャイコフスキー 交響曲第6番『悲愴』 ブラームス 交響曲第1番 ブルックナー 交響曲第7番 トヴォルザーク 交響曲第9番『新世界より』 シベリウス 交響曲第2番 ショスターコーヴィチ 交響曲第5番 という10曲。王道ですね。各項を読んでからこれらの曲を聴いてみるのがいいでしょう。 とにかく読みやすいので、お勧めの本です。 |