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114.マーチを作曲する 第4回

2007.11.24


 前回愛人宅のキャラクターを与えましたVIIのコードですが、ディミニッシュと呼ばれています。このディミニッシュは、根音の上に短3度と減5度を重ねた和音ですが、この上に長6度を重ねます(ディミニッシュ7)と、一オクターブの半音を含めた12の音を二つ跳びに重ねたことになるのですね。となると4つの音が等間隔に並び平等のような関係になり、メジャーやマイナーのように根音があるコードに比べ調性感が薄くなるんじゃないかなぁ、と思っております。

 で、このディミニッシュの存在に気づいたのは、学生の頃パソコンへ楽譜の打ち込みをなどをしているときてした。

 話はそれますが、当時(25年前)に私が使っていたパソコンというのは、SHARP MZ-700という機種でありました。CPUはZ80という8ビットCPUでクロックは3.58MHz、メモリは大容量64Kバイト、記憶装置はカセットレコーダという代物でした。私のはMZ-731というカセットレコーダ、プロッタプリンタつきの機種で、価格は128,000円だったと思います。モニターは買えなかったので古いモノクロテレビにつないでおりました。(テレビに直接つなげたというのもすごい事とでした。)
 「それってどの程度のパソコン」ってお思いの方も多いと思いますので簡単に説明しますと、CPUの速度は現在のPCの1/1000程度、メモリ容量は1/10000程度というところでしょう。想像を出来ないスペックですね。
 ワープロなどというアプリケーションはなく(しかし、なんと表計算はあったのです)、BASICという言語で自分でプログラムを組んだり、雑誌に掲載されたプログラムを自分で打ち込んでいたわけです。

 さて、そのMZ-700のサウンド機能ですが、
単音3オクターブコントロールできるのがテンポが7段階だけというもので、音の強弱も音色の変化も付けられませんでした。

 それで打ち込んでいたのが、J.S.バッハの「トッカータとフーガ ニ短調」でした。オルガンの重厚な和音がある曲ですが、MZ-700では単音しか出せませんので、細かい音符でアルペジオのように演奏させていました。こんな感じです。かなりしょぼいですね。

 最後の辺りを打ち込んでいるときに、妙な和音があることに気づいたのです。最後の3小節です。
 この3つ目の和音が、メジャーでもマイナーでもなく、よく見てみると4つの音程が等間隔に並んでいたのです。ディミニッシュですね。「へぇぇっ」と思いました。
 当時何かで読んだのですが、モーツァルトが諸先輩の作品を評して「トニックとドミナントの繰り返しで面白くない。」と嘆いていたというのです。(映画「アマデウス」でもそんなシーンがあったと思います。)
 それなのに、その時代より遥か以前のJ.S.バッハがこんな妙な和音を使っていたなんて、と驚いたのでした。

 ちなみに、この部分のコードを書き出してみると、
 Gmadd2 - Gm - Edim7 - Dm - Asus4 - Am -B♭add2 - Gm - Dm
と、なっております。(実はadd2とかsus4なんて、今調べて初めて知りました。)

 さて、ディミニッシュの思い出を書いていてずいぶん本題から離れてしまったのですが、作曲を続けましょう。今回は、前奏と間奏です。まぁ、その量が少ないので、前置きの話で伸ばしたということでありますが。

 前奏
 ファンファーレを意識した8小節です。第1マーチと同じにするか、シンプルに2コードにするか迷ったのですが、2コードでやってみましょう。
 IIIV
テンションを高めるために、Vを使いました。

 間奏
 トリオは「やさしさ、暖かさ」を考えていますので、あまり緊張感を強くしないように、
 IIV
という進行にしてみましょう。

 ということで、曲全体のコード進行が決まりました。が、まだ決めなければならないことがあるのです。それは曲全体の調性なのですが。
 オーソドックスに作りたいので、まず吹奏楽の最も得意である、変ロ長調(B dur)にすることにします。そして、マーチにはちょっとした決まりがありまして、「トリオは下属調」とすることが多いのです。ですので、トリオからは変ホ長調(Es Dur)とすることにします。

 というわけで、全曲のコード進行はこうなります。跳躍が派手にならないように、転回をしてみました。
 マーチ No.1コード
さて、これからどんなマーチになっていくことでしょうか。
次は、リズムパートを付けてみます。

【参考文献】
裏口からの作曲入門 ~予備知識不要の作曲道~ / 御池 鮎樹 / 工学社

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