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99.絶対・・・感

2007.8.12


 絶対音感については、以前にふれたことがありましたが、考え事をしているときに、ふと「絶対テンポ感と言うのはあるのだろうか?」と疑問に思ったのです。例えば、「一分間に132のテンポを叩け。」と言われて、メトロノームも見ずに正確に叩けるだろうか、また逆に踏み切りで警報機がカンカンカンと鳴っているテンポをその場で幾つと言い当てることが出来るだろうかということです。

 私の場合、一分間に60ならかなりの精度で叩くことが出来ます。60ということは一秒一拍ということです。まぁ、倍にすれば120も可能ということです。
 これは、目覚まし時計のカチカチ言う音を毎晩聞いているうちに、頭に染み付いてしまったものだと思います。今では、この秒針の音を五月蝿く感じるようになり、秒針の音がする時計は部屋には置かないようにしているので、多少正確ではなくなってしまったかもしれません。

 いつもですと、ネット検索するところですが、テンポといえば打楽器が専門ということで今回は打楽器の先生に話を伺ってみました。
「絶対テンポ感と言うものはあるのでしょうか?」
「あまり厳密に要求されるものではないですね。ある名門オーケストラではメンバーにテンポ幾つといって正確に叩けるかテストしたという話は聞いたことはありますが。
 音程と違って、多少ずれたところで(もちろん奏者の間でずれたらダメです。)分かりませんしね。同じ曲を指揮して、曲の長さが多少変わったところで問題ないでしょう。テンポって言うのは絶対的なものでなくて相対的にスピード感で速く感じるか遅く感じるかが表せればいいのでしょうね。まぁ、70から80の間で人間が速く感じるかゆっくり感じるかの境目はあるようですが。
 adagio、andante、moderato、allegretto、allegro、vivace位が区別して叩ければ充分でしょう。
 あとは稀に、5分と言って正確に5分を計れるようなヤツはいるけれどねぇ。何か別のことをしていても5分経ったら言い当てられるんだ。」

 最後の段を聞いて「ハドソン・ホーク」という映画を思い出しました。ブルース・ウィルス主演の1991年の映画です。ブルース・ウィルスは泥棒で、仕事をする際に曲名を宣言し、その歌を歌いながら、その曲の時間きっかりに仕事を終える、というところが印象的でした。これも一種の絶対テンポ感でしょうね。まぁ、テンポ感というより時間感覚でしょうか。

 岩城宏之さんの「楽譜の風景」には、こんなことも書いてあります。
 さて、金曜日が無事に終わり、土曜日の本番になった。ハイドンの直前に例のおやじ代表の二人が指揮者室に入って来た。
「昨日はとてもよかった。幻想交響曲はあんたの縄張りだから言うことはない。ハイドンのテンポもピッタリだったが、ハイドンについてはオレたちの方があんたより専門だ。昨日は客の層が若いし、空気も乾燥していたからあのテンポがちょうど良かった。しかし今日は午後四時だし、雨がジトジト降っている。それに客にはジイさんバアさんが多い。第一と第四楽章のテンポを、大幅に落としてごらん」
 (P117)

 こんな感じで、絶対テンポ間というものがあったとしても、音楽をやる上では、やはり心地よく聴けるというのが大切なのでしょう。
 そうは言いましても、指揮者というものはテンポを指示しなけれはなりません。譜面にAllegroと書いてあればそのテンポで振らなければならないのです。で、ちょっと素人の浅はかさで「絶対テンポ感」ならぬ「だいたいテンポ感」を身につける方法を考えてみたいと思います。が、それは次回に。

 さてさて、またまたふと思いついてしまったのですが、
「絶対音量感」
 何dBで音を出せといわれたら、その音量を出せるという、、、

 あ、すみませんすみません、、もう馬鹿なことは考えません、、、。


【参考文献】
楽譜の風景 / 岩城宏之 / 岩波新書

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