直線上に配置

97.純正律とヴィブラート

2007.7.28


 いつの事だったか、テレビを見るともなしにチャンネルを替えていると、ふと目に止まった番組がありました。教養講座のような番組だったのですが、歴史的な調律の方法を実際にやりながら解説していくというもので、思わず見入ってしまいました。
 確か、こんな内容だったと思います。外国で製作されたものらしく言葉による説明はほとんどなかった気がします。

 まず、完全五度を積み重ねていく調律。ピアノのドとソを同時に鳴らし、うねりが無くなるようにソを調律します。次にこのソを基準にしてそのうえのレを調律します。次にオクターブ下のレを合わせ(この辺ちょっと曖昧。オクターブ下げてたかなぁ?)、次にラを合わせ、、、というように完全五度を積み重ねながらオクターブ内12音全部を調律します。これは、ピタゴラス音律というものになります。完全五度はきれいに響くのですが、ドミソの和音はきれいには響きません。

 次に、完全五度と長三度を用いて調律していきます。これが純正律となります。これはドミソ、ファラド、ソシレはきれいに響くのですが、そのほかの和音になると濁りがひどいものが出てきます。

 次に、完全五度をわずかに狭めて調律していく方法。中全音率といいます。詳しくは下のリンクを見ていただくとして、うねりがあることを確認しながら調律していくのが印象的でした。濁る和音は減ってきているのですが、それでも最後に合わせた音と最初の音が同時に鳴る和音はかなり濁っています。

 この辺で、同じような作業が続いたので、だいぶ飽きてきてしまってチャンネルを替えてしまったのですが、多分次はウェル・テンペラメントという方法で調律したのではないかと思います。

 まぁ、この流れをざっと言ってしまうと、古い調律方法はきれいに響く和音と濁る和音の差が大きく、この差を縮めるためにいろんな調律法が考えられてきたということでしょう。何故そんなことが必要だったかというと、ピアノを一つの調で調律してしまうと他の調で演奏した場合、濁りが出てしまうからですね。作曲家は、いろんな調の曲を書きたかったり、曲の中で転調させたかったり、いろんなことを考えたのですが、こういった足かせがあったのです。

 最終的には、平均率というものが確立されました。オクターブ内の音程を機械的に均等な比率で割り振ってしまったものです。これはどの和音も平等に響くので、いろんな調の曲でも、転調も自由に演奏することが出来ます。ただし、どの和音も少しずつ濁っている事になります。
 非常に合理的で便利な平均率なのですが、批判もあります。古い調律では調による響きの差があったため、それが調の個性ともなっていました。平均律ではその個性が失われてしまったということなのですね。また、平均律に慣れてしまうと、完全に響いた純正律の和音に鈍感になってしまうとか。
 このあたりから、だんだん難しくなっていくので、私のおちゃらけたコラムでは書ききれませんので、専門書などで勉強してください。(実は私も一夜漬け程度なので、それほど理解していません)

 オーケストラや吹奏楽で使う弦楽器や管楽器は、音を出しながら音程を微調整することが出来ますので、和音がきれいに響くなぁ、と思う音程を探せば良いのではないかと思います。ピアノで音を拾ってその音程でしか音を出さないというのは、良いことではないのですね。私たちも学生の頃には、「第三音は低めにとって」なんてよく言いあっていましたね。

 しかし、考えてみると古い曲などは、その作曲家が使った調律法で調律した楽器で演奏しないと、意図された響きがしないことになりますね。古楽って、見た目ほど単純ではありませんね。

 あと気になっていることが一つ。ヴィブラートです。音を揺らして、豊に聴こえる音色にしているわけですが、何を揺らしているかというと音量や音程ですね。あれほど神経質に調律した音程を揺らしてしまうのです。なにか矛盾しているような気もします。
 私も以前、トラでブリティッシュスタイルのブラスバンドで演奏してから積極的にヴィブラートをかける様になってしまいました。そのブラスバンドに行ったときには「どの音にも必ずヴィブラートをかける様に。」と真っ先に教え込まれましたからねぇ。(「チューニングではヴィブラートをかけないんだ!」という笑い話もあるくらいで)

 ヴィブラートって言うのは、平均律のわずかな濁りを逆手に取った奏法なのかも知れませんね。ということは、純正律などで調律した場合はヴィブラートはかけてはいけないのですね。だから、ピリオド奏法ではヴィブラートはかけないのかぁ。などと、根拠のない考察が始まってしまいました。
 あぁ、やっぱり「休むに似たり」だわ。


【参考文献】
ウィキペディア フリー百科事典
http://ja.wikipedia.org/wiki/ピタゴラス音律
http://ja.wikipedia.org/wiki/純正律
http://ja.wikipedia.org/wiki/中全音律
http://ja.wikipedia.org/wiki/ウェル・テンペラメント
http://ja.wikipedia.org/wiki/平均率

前を読む 『休むに似たり』TOP 次を読む



Copyright(C)2005-7 T.Miyazawa All Rights Reserved.

直線上に配置