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85.タイムカプセルを開ける

2007.5.5


 別に、ずっと以前にタイムカプセルと称して宝物を箱にしまっておいたわけではないのです。先日、実家に戻り掃除をした際に、古いものが沢山出てきて、「こりゃタイムカプセルだわい。」と思った、次第です。私は、学生時代と、就職してからの転勤(就職自体は実家から通えるところにしたのですが)により、何回か実家を離れて生活をしております。その度に、私物の整理が滞り何がどこにあるかが分からなくなっていったわけです。

 今回見つけたものは、20年ほど前に聴きに行ったコンサートのプログラム。何しろ一年に2〜3回しかオーケストラを聴く機会がないところですから、貴重なチャンスだったのです。そのときの思い出などを、書いてみたいと思います。

1987年4月13日
《指揮》 シャルル・デュトワ
《管弦楽》 ハンブルク 北ドイツ放送交響楽団
《曲目》 
H.ベルリオーズ / 歌劇「ベアトリスとベネディクト」序曲
R.シュトラウス / 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」 作品30
J.ブラームス / 交響曲第1番 ハ短調 作品68

  

 まず、指揮者を見てびっくり。デュトワですか? すっかり記憶にありませんでした。このころモントリオール響との名演のCDがいくつも発売されていたはずですから、憶えていてもいいようなもんですが。
 それから、プログラム。「ツァラ」と「ブラ1」です。なかなか豪華ではありませんか。ところが、この曲を聴いたという記憶もないのです。本当に、私はこのコンサートを聴きに行ったのでしょうか?
 北ドイツ放送響(NDR)を聴いたという記憶はあるのです。その記憶というのは、会場に入る前に、近くのレストラン(というか食堂に近い)でオケのメンバーが食事を終え和気藹々と出てきたところを目撃して、「いい雰囲気のオケだなぁ。」、などと思ったということです。実際の演奏も良かったと覚えているのです。指揮者と曲目は覚えていないのに。
 実際に、このプログラム、このメンバーでもう一度聴いてみたいと思いますよね。
 その後何年かして、このホール(伊那市民会館)の舞台袖に入ったとき、制御盤にNDRのステッカーが貼ってあるのを見て、彼らは人柄というのを感じたものです。「ここで楽しんでいったんだなぁ」と思いました。

そして翌年
1988年6月23日
《指揮》 アラン・ロンバール
《ピアノ》 シプリアン・カツァリス
《管弦楽》 ボルドー管弦楽団
《曲目》
M.ラヴェル / ボレロ
R.シューマン / ピアノ協奏曲 イ短調 作品54
H.ベルリオーズ / 幻想交響曲 作品14

  

 こちらのコンサートは良く憶えています。私の聴いたコンサートの中で最低最悪のものでしたから。
 フランスのオケで「幻想」が聴けるというのが非常に楽しみでありました。また、「ボレロが一曲目ですから開演時間に遅れないように」などという文言がポスターやチラシにあったと思います。それほど期待している人も多かったのですが。
 まず、ボレロ。速いです、速すぎます。指揮者が一拍くらい先を振っている感じ。すでに早く帰りたいという態度が見え隠れしていました。
 ピアノ協奏曲。指揮者が舞台袖から出てきて指揮台に飛び乗った、瞬間、音が鳴り曲が始まっていました。曲を始める前にお辞儀をしなかったのを見たのはこのときだけです。
 「幻想」。この曲も速い。第5楽章のクラリネットソロ(グロテスクになった、恋人のテーマ)は、速過ぎてまともに吹けていませんでした。
 これが、かれらの解釈であり、演出であったのかとは信じられませんでした。一刻も早くこの場から立ち去りたいという空気しか感じられませんでした。
 確かに、会場の伊那市民会館は20年前ですら古い古い貧相なホールです。プライドが高い人たちから見れば、演奏する気も失せるでしょう。
 でもねぇ、前の年のデュトワ&NDRとのあまりにもの違いに、大変切ない思いをしたことも確かでした。


 さて、そのほかにもタイムカプセルから発見されてしまったものがありました。私の小中学校時代の成績表。
 これを見た女房が一言、「子供には見せられないね。」
 

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