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84.刻むU

2007.4.28


 前回は、弦楽器のトレモロを管楽器でどう演奏するかを考えてみました。とにかく、譜面どおりに演奏するためのアイディアを出してみたわけです。
 しかし、ちょっと待てよ。管楽器は弦楽器に比べ全体的に音が大きいのですから、正直に全部トレモロをやろうとすると非常に五月蝿くなってしまいそうです。であるならば、作曲者がそのトレモロをどのような効果を狙って使用したかを考えて、それに似た効果を別の手段で出せればよいことになるのではないでしょうか。
 ということで、トレモロがもたらす効果と、それを代替する手段を考えてみましょう。

音色を変える
 
弦楽器はトレモロという奏法に変えることにより、音色を変えることが出来ます。管楽器でやる場合は、別の楽器に変えてみるとか、別の楽器を加えて音色をブレンドして対応することが出来ます。

強い音にする

 トレモロは、発音点を連続させるわけですから、延ばしている音は強い音になります。管楽器でやるときは強く吹くとか、強い音がする金管楽器をブレンドするなどの方法があります。

音に厚みを持たせる
 沢山の音が持続することで、音が厚くなります。これも上と同じように音を重ねて厚みを持たせることが出来ます。

空間的拡がりを作る
 ピアニシモで音を重ねながらトレモロで演奏すると、サワサワとした感じで空間的な拡がりを持った雰囲気を作ることができます。これは管楽器で再現するのは非常に難しいのです。やるとすれば、木管楽器でバッテリー(前回を参照)を演奏するしかないのですが、、、弦楽器の繊細さはなかなか出ませんね。

スピード感を持たせる
 トレモロの一つ一つの音が聴き取れるくらいの速さですと、テンポがはっきりしスピード感を得ることが出来ます。吹奏楽でやるには、金管楽器のダブルタンギングでの演奏が良いでしょう。曲によってはスネアドラムを入れるというのも手です。

とにかく刻みを聴かせている
 なんだかちょっと分かりませんが、雰囲気的にとにかくここはトレモロだろう、というところです。原曲の印象が強くて上で挙げたような手段では違和感があるような場合でしょうか。
 トレモロが六連符なら16分音符へ、16分音符なら三連符へと管楽器でも演奏できる速さの刻みに間引くのがいいのではないかと思います。

神秘的な雰囲気、不穏な空気、恐怖感などを表す
 これらはトレモロそのものの効果ということではなく、曲全体の雰囲気作りによります。こういうのは演奏者にお願いすることになりますね。

 という感じで、トレモロの代替手段を考えてみました。最終的には音を出してみたときに違和感が少ないものを選べば良いと思います。
 今まで編曲してきた譜面をみると、無理やり刻まなくても良かったと思えるところがいくつもありますね。まぁ、いずれ改訂作業も必要かなとひそかに思っているわけです。

 さて、それではいつも参考にしている、「バンドのための編曲法」にはトレモロの対処についてどう書かれているでしょうか。

 弦楽器に抑揚を加えるためのトレモロは、オーケストラ曲では各所に出てくるが、木管楽器にスコアリングする場合には無視してかまわない。(P139)

 無視ですか、エリクソンさん。 
【参考文献】
バンドのための編曲法 わかりやすいオーケストレーション
F.エリクソン 著 / 伊藤康英 訳 / 東亜音楽社 発行 / 音楽之友社 発売

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