直線上に配置

69.フォルテ

2007.1.13


 楽譜の中に書かれてある記号に

 

 というのがあります。「フォルテ」と読むのですが、どういう意味かと尋ねると、たいていの人は「強く」と答えられるでしょうし、実際に楽典を見てもそのように書いてあります。本はイタリア語のforteで、やはり「強く」という意味です。

 しかし、私にはフォルテの意味が「強く」というのに抵抗があるのです。

 「強く」或いは「強い」という言葉から受けるイメージには、どんなものがあるでしょうか。
 強靭、硬い、威力がある、頑丈、、、という感じですね。場合によっては乱暴なイメージになってしまうこともあります。とすると、フォルテの音はというと、強靭な音、硬い音、威力がある音、頑丈な音、、。もちろん音楽に中には、そういった音は多くありますが、すべてのフォルテの音がそうではないでしょう。

 ですから私はフォルテの意味は「強く」ではなく「大きく」だと考えています。クレッシェンドは「徐々に強く」ではなく「徐々に大きく」ですね。「強く」と「大きく」は別物だと思います。

 たとえば、「大きくてやわらかい音」を表現したいと作曲家が考えたとします。雄大なイメージがあっても強いというイメージはわかないでしょう。でも、譜面に書くときはフォルテと書きます。まぁ、フォルテだけではイメージが伝わらないと考えたときは、曲想標語も加えるのですが。

 しかし、多くの人はフォルテの記号を見て大きな音で演奏しています。頭の中ではフォルテ=大きな音と認識しているのでしょう。

 もう一度考えて見ます。「強く」というのは何を表しているのでしょうか。強く弾く、というように演奏の方法を現しているのです。そして、強く弾いた結果、大きな音が出てくるのです。ピアノなどの鍵盤楽器や打楽器の場合は、この通り「強く弾く=大きな音」と言うことが出来ます。
 しかし、弦楽器や管楽器の場合は、音色をコントロールできますから、強く演奏する以外にも大きな音を出すことが出来るのです。強く弾く(吹く)というのは大きな音を出すことにイコールではなく、手段の一つなのです。

 多分、フォルテを始めとする強弱記号を考えた当時は鍵盤楽器を主に想定していたのでしょうね。

 大切なのは演奏する上でどのように表現するかを考えることですから、「強い」か「大きい」かの言葉尻を捉えて、屁理屈をこねること本筋では無いでしょう。
 それでも、気になってしまうのは、フォルテの記号を見て乱暴な演奏になってしまう人がいることですね。やはり「強く」では良くないなと思ってしまいます。

前を読む 『休むに似たり』TOP 次を読む



Copyright(C)2005-7 T.Miyazawa All Rights Reserved.

直線上に配置