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60.ある衝撃

2006.11.11


 前回は、ここ2年半の間に聴いたコンサートについて書きましたが、もちろんそれ以前にも何回もコンサートに行っておりました。ただ、記録はしていなかったので、何を聴いたかを正確に思い出すことは出来ません。

 東京に住む以前に居た界隈でのコンサートの状況というのは年間に、プロのオーケストラが来るのが2回、地元のアマチュアオーケストラが1回、時々どこかの大学オーケストラの遠征があるという、都合3回程度のものでした。これは、今でも変わっていないと思います。
 当然プログラムなどは地方公演向けの有名な人気のある曲が多かったですね。
 ですから、多分もっとも多く聴いたのは「運命」だと思います。

 最初に「運命」を聴いたのは中学1年生のときの信州大学交響楽団の伊那公演でした。当時中学の音楽の先生がこのオケの出身で、数人の生徒と一緒に聴きに行きました。
 そして、その「運命」の演奏のとき、指揮者の指揮する姿を見て、ある衝撃を受けたのでした。

 曲を始めるとき、指揮者は予備運動ということから始めます。いきなり、一拍目から振り出しても演奏者は音を出すことが出来ませんから、その前の拍から振り出すわけです。「さんっ、はいっ」というヤツです。もちろん本番では声には出しませんが。
 「運命」の場合、2/4拍子でテンポは二分音符が108の指示ですので、予備運動は1拍(二分音符分)あれば良いはずなのですが。

 そのときの演奏は、指揮者が何かゴニョゴニョゴニョゴニョッて感じに妙な動きをしてから指揮棒を振り下ろし、ピタッと止まったところで、
 「ジャジャジャジャーン!」と音が出てきたのです。
 衝撃でした。何なんだろう、と思いました。でも、正直言って「みっともない」と思いました。あの妙な動きにどんな意味があるかも分かりませんでしたし、、、。

 それ以降、「運命」の演奏を見るときには、音が出る直前に指揮者がどんな「奇妙な」動きをするのか気になる様になりました。多かれ少なかれ、どの指揮者でも「奇妙な」動きはしていたのです。
 これを見て私は、「「運命」は指揮したくないなぁ。あのみっともない動きをするのは嫌だなぁ。」なんて思ったりしたのです。指揮をするかどうかも分からない時分に。

 最近見た「運命」では、昨年末の岩城さんは予備運動1拍で音が出ていましたし、ゲルギエフさんも1拍でしたので、必ずしも「奇妙な」動きがあるわけではないと分かってきました。

 それでも、いまだに謎なのです、「奇妙な」動き。何なのでしょうか。指揮者の「運命」に向かう気持ちが高揚すると発してしまうアクションなのでしょうか。でも、他の曲で見ることは無いのですが。「運命」だけが持つ、特殊な魔力の様な物があるのでしょうか。
 もしかして、私も「運命」を指揮することがあったら、その時には分かるかも知れません。楽しみのような気もします。

 ということで、どなたか私に「運命」を指揮する機会を与えてくれないでしょうか。スコアも出来たことですし。

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