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58.オリジナルとコピー

2006.10.28


 秋になって街などを歩いていると金木犀の香りが漂ってくることがあります。(すみません、ちょっと季節が外れてしまいました) 金木犀の香りって、なんともいえず暖かい陽だまりを連想させるような、いい香りですね。
 ところが、この香りをかぐと別のものを思い起こすようになってしまったことは、皆さんお気づきではないかと思います。
 そうです。トイレです。いつごろかは憶えていませんが、トイレの不快感をなくすために金木犀の香りの芳香剤が使われるようになりました。
 その当初は、「トイレもなかなかいい香りになるもんだ。」などと感心していたのですが、あるとき、街を歩いていて本物の金木犀の香りをかいだとき「近くにトイレがあるのかな?」と思ってしまったのです。
 つまり、本物の金木犀は一年のうちある一時期しかありませんが、トイレというのはいつでもあります。本物よりも芳香剤のにおいを嗅ぐ機会のほうがはるかに多く、いつしかその香りはトイレのにおいとして定着してしまったのです。コピーがオリジナルを食ってしまったということになります。「グレシャムの法則」の一例と言う事が出来ましょう。
 その後、芳香剤メーカーは反省したのか、多種多様な香りの芳香剤を発売するようになり、金木犀の香りイコールトイレのにおいという公式は薄れてきたと思います。

 似たようなことが最近もありました。
 台所用洗剤にオレンジの成分が入ったものが出てきました。オレンジ成分が油分を分解するということなんでしょうか。そういえば一時オレンジでダイエットとか言っていた人がいたような気がしますが、この場合一歩間違えば果糖で太ってしまうと思うのですが。
 話が逸れました。元に戻しましょう。オレンジの洗剤です。これも最初のうちは、洗剤の臭いよりもいい香りなので快適などと思っていたのですが、あるときからミカンを食べようとすると洗剤を思い出してしまい、食べることが出来なくなってしまったのです。
 ミカンを食べなくて困ることはありませんが、やはり食べられないものに食べ物のにおいをつけるというのは、いかがなものかと思ってしまいます。

 こんなこともありました。
 ある日、いつもより早めに出勤すると、まだ人の少ない職場にある有名な殺虫剤の臭いがしていました。職場に害虫なんかが出たことも無く殺虫剤などまくことはなかったので、私は「誰だ、殺虫剤なんかまいたヤツは」などと大き目の声でつぶやいたのですが。まぁ、だれも答える人はいないわけです。
 で、その日、ある女性の近くに寄ったときに、その殺虫剤の臭いがするわけです。
 「これってもしかして、香水の臭い?」
 あなたの香水は殺虫剤と同じにおいがしますね、なんてことは聞けませんから、確認は出来なかったのですが。
 香水メーカーが殺虫剤と同じ臭いを香水にするわけは無いでしょうから、殺虫剤メーカーの方が殺虫剤に香水の臭いをつけたとなるわけでしょう。でも、これってその香水にとっては大変なマイナスイメージではないでしょうか。香水メーカーは何も言わなかったのかな?
 本当にそんな臭いの香水があるかは分からないのですが、どなたかご存知でしょうか?

 ということで、オリジナルよりコピーの方が影響力が大きくなってしまったというお話でした。

 私の編曲も、オリジナルの管弦楽曲を吹奏楽にコピーしていることになるわけですが、オリジナルの方がはるかに耳にする機会が多いのでコピーの方が有名になることはないということになります。
 少し残念な気がしますが、それで良いのです。

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