No.50でホルストのことを考えているとき、こんなことも思い出しました。 1982年の3月のこと、私が高専4年生になる前の春休み中でした。尚美音楽短期大学で開催された「第1回JBA吹奏楽ゼミナール」に参加しました。3日か4日の日程だったかと思いますが、さまざまなカリキュラムが組まれておりました。講師陣も日本の吹奏楽界を代表する方達ばかりという豪華なゼミナールでした。 受講生の方も、高校生、大学生、高専生(非常に少なかったが)、吹奏楽部顧問の先生、等様々な人々が約80名ほどだったと思います。(現在は作曲家の宮沢一人さんも受講生にいらしたと記憶しております。) この手の講習会のカリキュラムのひとつに受講生による全体合奏があります。指導者講習会ということで受講生を募集していて、担当している楽器は問われていないので、全員を集めた場合合奏できるような楽器編成になるか不明でしたが、うまくしたものでいい編成のバンドがひとつ出来上がりました。もちろん私はユーフォニアムとして参加しました。 実は、事前には知らされていなかったのですが全体合奏の講義でスペシャルゲストが招かれていたのでした。フレデリック・フェネル(1914-2004)さんです。このときが初来日だったようですね。 フェネルさんが指揮棒を持ちクリニックを行ったのは、G.ホルストの「吹奏楽のための第1組曲」。 この曲には、ユーフォニアムのパートにおかしなところがあります。第2楽章インテルメッツツォ、中間部の終わりにユーフォニアムのソロがあるのですが、メロディーの一音がソ(G)かファ(F)かはっきりしていないのです。ユーフォニアムのパート譜にはファで書いてあるのですが、他のパートの演奏する同様のメロディはソになっているのです。ユーフォニアムだけ違う音というのは、間違いではないかという訳です。 ほかのメロディーとの整合性を考えるとソと解釈できるのですが、ちょっと変化をもたせたとするとファは効果的なのです。実際にどちらかが好きかと聞かれれば、私はファの方と答えますね。 当時、私が聴いて知っていた録音はデニスウィック指揮ロンドンウィンドオーケストラとフレデリックフェネル指揮クリーブランド管弦楽団管楽セクションの二つ。前者がソで後者がファで演奏していた。 この日、このソロを吹くことになったのは私でした。さてどちらで吹こうかと思ったのですが、目の前に当人がいるのですからファで吹きましいた。 すると、フェネルさんが言ったのです。 「今まで気がつきませんでしたが、そのユーフォニアムの音はファで吹くのが正しいですね。」 もちろん英語で仰ったのですが。(一応、秋山紀夫さんが通訳をしていたのですが、そのくらいの聞き取りは何とかできました。) 私は「フェネルさんの指揮した演奏でもファでしたよ。」と言おうかと思ったのです、英語でしゃべる自信がないのでやめておきました。 しかし、ホルストの第1組曲とフェネルさんとは非常に強い結びつきがあったはず。自身が指揮した演奏を覚えていないなんていうことはあるのでしょうか。特にこんな特徴的な部分を。もしかして、、、、 今はもう本当のことはわかりませんね。私の思い違いかもしれませんし。 24年も前のことでした。 |