以前書こうと思い一旦は諦めた本なのですが、ここは思い切って書いてしまいましょう。 絶対音感 / 最相葉月 /小学館文庫 最近、新潮文庫からも出た様です。 筆者の最相さんは私と同年代。本書は非常によく取材してあり、実に丁寧に書かれています。また第四回小学館ノンフィクション大賞を受賞しています。 まあ、私なんぞがとやかく言える作品ではないのですが、内容につきましては本書(小学館文庫版)295ページに書かれている、 〜絶対音感とは特定の音の高さを認識し、音名というラベルを貼ることのできる能力であり、音楽創造を支える絶対の音感ではないことはすでに何度も述べた。だが、それがさまざまな能力と複雑に絡み合い、優れた表現として賛嘆された結果、初めて才能を支えるひとつの道具として浮かび上がるのではないだろううか。〜 というところがすべてでしょう。 本全体は、前半は「日本音楽教育史」、終盤は「五嶋家物語」というのであれは面白い本なのです。本のタイトルとして「絶対音感」とするには絶対音感の比重が高くない部分が多すぎる気がします。つまり絶対音感について書こうとしたら関係のないところから延々と書かなければならない、ということなのでしょう。(読解力ないかなぁ) それでこの本の一番面白い部分は、小沼純一さんの解説にありました。この部分(408ページ)引用してみます。 〜事実、著者は絶対音感教育をめぐる推薦文を依頼されたりなど、見当はずれなアプローチをされることも少なからずあったらしい。〜 最相さん自身は絶対音感について、上に引用したとおり「才能を支えるひとつの道具」といっているわけで、絶対音感(のみを主眼とする)教育は肯定はしていないと読み取れるはずです。それなのに「推薦文を依頼」だそうです。 いかに人は自分の都合の良いようにしか読み取らないかということが、よく解りますね。こういうところに私は反応してしまいました。 私自身も、都合のいい読み方をしているかもしれないぞと戒めて、今回はお終いです。 |