ベートーヴェンの交響曲を全部吹奏楽に編曲すると言った私ですが、全部と言ったからには全部やりたいわけです。ということで、『ウェリントンの勝利』なんていう曲までやっているのですが、さらに、『交響曲第10番』という曲があるらしいのです。 第10番というと、ブラームスの交響曲第1番がそう呼ばれてしまうことがありますが、それではありません。 十数年前(多分89年でしょう)になりますが、あるCD屋さんで見かけました。新譜のコーナーに十数枚まとめてドンとおいてありました。珍し物好きの私ですが、第一楽章約20分のみで通常のCDと同じくらいの価格だったので非常に割高に感じ、買う気にはなりませんでした。 それに、ジャケットに書いてあるコピーがいかにも胡散臭く、「本物かなぁ?偽物っぽいなぁ」という印象だったのです。 これは、ベートーヴェンのスケッチからバリー・クーパーという音楽学者が補作した曲のようです。しかし、どの程度ベートーヴェンが書いていて、どのあたりから補作されたのか、はっきりしません。 バルトークのピアノ協奏曲第3番なら、「最後の17小節が未完で、弟子のティボール・シェルリが完成させた」とか、シューベルトの『未完成交響曲』は第三楽章の最初何十小節までスケッチがあるとか、マーラーの交響曲10番は、、、といった情報がベートーヴェンの交響曲第10番の場合あまり知られていないのですね。 調べてみますと、一応、第10番の構想はあって、ベートーヴェンは秘書カール・ホルツに第一楽章をピアノで弾いて聴かせたことはあると云われています。バリー・クーパーはそのスケッチを見つけて、再現したということらしいのです。(再現といってもベートーヴェンはオーケストレーションしていないのですから、かなりの部分をバリー・クーパーが創っちゃったんでしょうね。) スケッチだけかぁ、、、 そんなこと言い出したら、スケッチされたものは何曲もあるようだし、きりが無くなっちゃいますよね。 ということで、実際にベートーヴェンが完成させていませんので、私としてはノーカウントということにしたいと思います。 スコアも手に入らないでしょうし、編曲の許諾も取れないようですので。(ということは著作権はバリー・クーパーにあるということで、ベートーヴェンの曲ではないと言っている様なものですよね。) この駄文を書いてから、少し残念なことに気が付きました。 「10回目に書けばよかった、、、」と。 【参考文献】 ・ベートーヴェン「おお友よこの調べではなく−《第9交響曲》の歴史と現在」 (企画・構成 音楽研究所ベートーヴェン研究部門) http://www.lib.kunitachi.ac.jp/tenji/tenji2003.htm ・連載 教育現場の吹奏楽指導 その2 「オーケストラ作品の編曲と演奏」(私見) 川勝和哉(兵庫県立姫路東高等学校吹奏楽部顧問・指揮者) http://www.basj.or.jp/accord/rensai_25_1.htm |