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11.なぞの疾病T

2005.8.24


 私は、医者とか病院といったところが好きではありません。まぁ、「好きか?」と聞かれて「好き」と答えられる人はそう多くはいないと思いますが。
 なぜ好きでないかと言うと、たった数分の診察を受けるのに下手をすると半日ほども待たされることがあるからです。
 風邪で朝一に医者へ行き、待たされること2時間。ようやく診察してもらえば3分程度の診察で「風邪です」と言われ、薬を処方されるだけ。昔は注射をしてくれたので、それなりに有り難味はあったと思うのですが、薬を出してもらうだけならねぇ。薬局に行ったほうが親切に薬を教えてもらえますよ、待たずに。
 保険が利くといっても、数時間無駄に過ごすことを思えば市販の薬だってそう高くはないと思いますし、その待合室にいる半日を、家で暖かくして寝ていた方が早く良くなると思うのですが。風邪に関しては(万病の元というくらいですから侮ってはいけませんが)医者に行くメリットは感じない私です。
 私の女房という人は、病院に務めていただけあって、医者に行くことにそれほど抵抗がないようです。ですから、私が風邪っぽいなどというと「すぐ医者へ行け」と言い、私は「行かない」というものだから喧嘩になったりします。風邪をひいているのに。まぁ、そんなことはどうでもいいのです。

 二十代半ばのことだったと思います(当時まだ独身でした)。季節は秋、夏の名残がまだあるころでした。
 夜、眠っているとき腹部に痛みを感じたのです。右側の肋骨の下、奥の方で強く鷲掴みされたような痛みです。生まれて初めて味わう痛みです。
 と、ここまで書いておいて、医者が好きでない理由をもうひとつ思い出しました。医者に「どのように痛みますか」と聞かれて、うまく説明できないのです。ボキャブラリーが貧困なもので。この文章を書きながらも、どう痛みを表現したものかひとしきり悩んだわけで、、、、閑話休題。
 痛みを感じ、多少寝ぼけながら「このまま死ぬかもしれない。」と思ったのでした。しかし、その日はしばらくして痛みが引き、再び眠りに落ちたのでした。

 翌日の晩、眠っているとまた同じように痛くなりました。
 3回目は会社で仕事中(もちろん起きていますよ)に。こうなれば、もう医者が嫌だとは言っていられません。早退して速攻で病院へ行きます。内科へ行き、一通りの診察をしたところで、「内視鏡を飲んでみましょうか。」ということになりました。

 内視鏡です。聞くところによれば、それはそれは苦しいものだそうではありませんか。私にとって初体験です。
 しかし、あの痛みと戦い続けることを思えば、、、。日を改めて、内視鏡を飲んだのでありました。

 もともと私は咽喉が弱いのです。咽喉に麻酔はするのですが、やはり飲み込むときにとても苦労しました。とりあえず胃の辺りをしばらく見られて、「もうそろそろ勘弁してくれぇ。」と限界に近づいたころ、お医者様が言ったのです。
「十二指腸も見ますね。」
 ジュウニシチョウ、、、、胃の先かぁ。と思っている先からさらに別の苦しさが。腹の中で内視鏡が奥へ入っていくのが分かるのです。
「エイリアンに腹を食われるのはもっと苦しいのだろうな。」などと訳の分からないことを考えながら、検査が終わるのをひたすら待ったのでした。
 そして、検査の結果。
「どこにも異常はありません。」

 その後、あの腹痛が起きることはなくなったのです。結局、原因は分からず仕舞いでした。



 あるとき、どなたかのエッセイで似たような話を読みました。おじいさんが腹痛を訴え、病院で精密検査をしたが原因不明だったという。最後には、実際の原因が書いてありました。
 きっと私の痛みもそうだったのでしょう。
 その原因とは『便秘』でした。 



注1) 内視鏡検査につきましては、上に書いたような苦しさの少ない方法もあります。実際に内視鏡検査を受けられる際にはお医者様によく話を伺ってください。
注2) タイトルは、高橋留美子さんの短編からお借りしました。
 

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