学生時代の吹奏楽部同期メンバーで毎年新年会を行っております。 今年(2005年)は私が幹事をしまして、学生時代よりお世話になっている先生にも参加していただきました。 飲み始める前からシモネタが炸裂し、宴会は爆笑の連続で、部屋に戻ってからも延々と飲み続けたのでありました。(先生のいろいろなネタが山ほど出てきて『失敗談』に書きたいのだけど、ダメだろうなぁ) そして、さわやかな翌朝。 頭を抱えながらの朝食の雑談の中で、先生が 「ベートーヴェンはメトロノームを使って作曲していたんだよね。」ということを仰られたのです。 「メルツェルがメトロノームを発明したばかりでね。楽譜のテンポ指示のM.M.というのはメルツェルのメトロノームという意味だよ。」 これは、“3へぇ”くらいのトリビアなのですが、なぜ“へぇ”と思ってしまうかというと、 「ベートーヴェンという古い時代の人が、メトロノームという近代的な精密機械を使った」からということになるでしょう。 しかし、ちょっと考えてみましょう。ベートーヴェンの生涯は1770年から1827年で、日本の歴史で見れば江戸時代の中頃から後よりです。 ベートーヴェンが没してから新撰組の池田屋事件まで40年足らずなのです。ね、意外と最近でしょう。秀吉や信長なんかの方がずっと古いのです。 次に、メトロノーム。メトロノームの基となった機械といえば時計でしょう。ゼンマイ式の懐中時計が実用化されたのが1727年のことですから、ベートーヴェンの生まれる40年以上前。時計という精密機械の歴史も意外と古いのです。 メトロノーム自体の発明は1817年であり、ベートーヴェンはちょうど交響曲第8番を作曲していたころです。 ということで、ベートーヴェンは最近の人だし精密機械の歴史も古いとなれば、ベートーヴェンがメトロノームを使ったとしても特に不思議なことではないでしょうね。 とりあえず、その場はみんなで「へぇ」と感心していたのですが、 「でもそのメトロノームは壊れていたんですよね。」 と私は補足してしまうのです。(嫌味なヤツですねぇ) この話、中学時代の音楽の先生に授業中に笑い話としてチラッと聞いていたものでした。 まぁ、「ベートーヴェンは新しいものを使って凄そうだったけど、結局だめじゃん」ということになって、別の話題へと移っていったのです。 ところが、しばらくして俊友会管弦楽団のホームページにある堤俊作さんのエッセイを読んで、うーんとうなってしまいました。 堤さんは、「ベートーヴェンのメトロノームは正確であり、ワインガルトナーが自分の解釈を正当化するためにメトロノームは正確でないと言ったのだ。」と述べられています。 私が中学時代に音楽の先生から聞いた話の出所は分かりませんが、多分ワインガルトナーの説が基となってベートーヴェンのメトロノームは壊れていたと話されたのでしょう。 私は、それをずっと信じていたわけですが。 トリビアだと思っていた話がガセだと分かった瞬間でした。 【参考文献】 時計三昧 http://kawai3.hp.infoseek.co.jp/index.html http://kawai3.hp.infoseek.co.jp/history2.html 俊友会管弦楽団ホームページ http://homepage3.nifty.com/shunyukai/index.htm http://homepage3.nifty.com/shunyukai/tokushu1.htm |