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394.逆は難しい

2014.1.13


 A.リードの作品に、『オセロ』 ~コンサート・バンド又はウィンド・アンサンブルのための5楽章の交響的ポートレート~ という曲があります。A.リードの曲の中でも現術性が高く人気のある曲です。
 私としましても、吹奏楽を始めた初期に出会っていますので馴染みのない曲ではないのですが、自身での演奏経験はないので、あまり深く考えたことはありませんでした。いつかは演奏してみたいと思っている程度でした。

 一昨年でありましたでしょうか、飯田市を中心に活動しているアンサンブル・ファンファールさん(金管アンサンブル)が『オセロ』を演奏するという事を耳にしました。
 吹奏楽曲を金管アンサンブルで演奏するということは、編曲をするか、木管パートをそのまま金管で演奏するか、ということになると思うのですが、どのように演奏するのかな?と思っただけで、これまた深く考えないでおりました。

 そして昨年末、伊那市近辺の金管奏者達が集まって『オセロ』を演奏しようという話が持ちあがって参りました。私も参加させていただけることになり、初めて『オセロ』の譜面を見ることになりました。

 その譜面は、金管アンサンブルのために書かれていたのでした。今、ウィキペディアで調べてみますと、『オセロ』吹奏楽版に先立って、金管合奏版が出版されていたのですね。これについては知りませんでした。
 ですから、アンサンブル・ファンファールさんもその譜面を使用したということでありました。

 では、どのような曲になっているかというと、木管が入っていないのです。当たり前じゃないか!となる訳ですが、木管が演奏している、細かいパッセージ… 6連符のスケール、3連符のアルペジオ、トリル、‥等がないということです。耳になじんでいる、嵐がうねるような木管の動きが聴こえないというのは、少し物足りない気がいたしました。

 これが、金管アンサンブル版を先に知っていて、後に吹奏楽版を知ったのであれば、そこまでの違和感は感じないのではないかと思うのです。あぁ、オーケストレーションが成されたと思うくらいで。
 リードの作曲にしても、金管アンサンブル版から吹奏楽版にするに当たっては、木管ありきのオーケストレーションをした訳ですから、金管アンサンブル版に無かった音を足していくのは当然の事と言えます。

 これが逆に、吹奏楽版からブラスバンド版や金管アンサンブル版への編曲となると、そうはいかないのです。難しいパッセージだからと言って省いてしまうと、先に述べたような大変な違和感を作り出すことになります。有った音を無くすというのは、結構勇気がいることです。まぁ、ピアノ版への編曲であれば、どうしても出来ないので諦めも付くのですが。
 あのブラスバンドで名高いブラック・ダイク・バンドのクラシック曲演奏も、音の省略は殆ど無いように思います。その代わり、カットは所々ありますけれど。カットの方が違和感が少ないと考えているのかもしれません。

 そんなわけで、私の吹奏楽編曲も原曲にある音はすべて演奏されるように考えて、かなり無理な部分を生じさせてしまっていると思っています。吹奏楽に適化させた形で編曲出来れば良いわけで、演奏できない譜面を書く事は無いのです。と、頭では思っているのですが。

 今回の、『オセロ』の金管アンサンブル版と吹奏楽版のイメージの違いを踏まえて、吹奏楽編曲においても弦の音を無くしてみることも試してみたいと思う次第です。

【参考文献】
ウィキペディア フリー百科事典 オセロ(リード) 

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