前回2月12日の更新から9ヶ月過ぎてしまいました。この間に、世の中でも、私の周辺でもいろいろなことが起こり(現在進行形の大事件もありますが)、このページの更新を再開する気持ちが小さくなっていたのです。 もう一つ、これを書かねば次を書けないという事がありまして、どう書こうか考えているうちにズルズルと時間が過ぎてしまったというのもあります。 その、書かなければならないこととは。 2月20日に聴いた、ベートーヴェン交響曲第7番 吹奏楽版全曲についてです。 演奏していただいたのは、愛知県の田原市吹奏楽団とアンコーラ・ムジカの合同楽団。田原市吹奏楽団は、吹奏楽コンクールで愛知県代表になったこともある実力を持ち、アンコーラ・ムジカは音大・芸大音楽専門校の出身者で構成されているという、これまた実力のある皆さんの集まりなのです。 指揮は、濱津清仁さん。プロフィールを見ると東京音大からウィーン国立音楽大学をへて小澤征爾、秋山和憲、広上淳一らに師事したという立派な経歴をお持ちです。お会いして、お話させていただくと、実に気さくで楽しくお話をして下さる方でした。 という、実力者の皆さんが、私の編曲した譜面に取り組んでくださったわけです。私のために演奏したわけではないのですけれど。 曲が始まった瞬間。「あぁ、ベト7の響きがする」と分かりました。しかし、やはり弦の音がしないのでいつもと違う音。妙な違和感というのはありました。そりゃそうです、吹奏楽ですもの。 曲が進むにつれて、耳が慣れてきて違和感は薄れてきました。そして、吹奏楽でもベートーヴェンの音はするのです。 全曲を聴き終えて、やはりベト7を聴き終えた時の高揚感というのはありました。 それと同時に、吹奏楽で演奏することの難しさをひしひしと感じていたのでありました。 まず、パートバランス。私の編曲は、弦パートをクラリネット、サックスに移し、その他のパートはほぼ原曲のままです。以前より言っておりますが、編曲というより移し換えなのです。 通常の吹奏楽団では、金管のメンバーの比率が多くフォルテをそのとおりに吹くと他のパートを消してしまいがちなのですね。特に第4楽章などは、弦の細かい動きがクラリネットとサックスの一部だけとなり、他のパートが全部伴奏パートになります。同じフォルテで演奏すると細かい動きのパートが殆ど聴こえなくなります。 次は、アーティキュレーションのこと。特にアクセントを現代吹奏楽と同じ演奏をしてしまうと、パートバランスで取り上げた問題と同じ問題を起こし、さらにベートーヴェンらしさを失うことになります。ベートーヴェンにはベートーヴェンのアクセントの仕方がある様です。交響曲を演奏しているというより、ベートーヴェンを演奏しているという意識が必要なのです。譜面だけを追っかけていると、ベートーヴェンらしさが出ません。難しいところです。 更に吹奏楽で40分間演奏し続けることの厳しさも感じました。どのパートも、疲れますし、集中力を維持するのが難しそうです。 そんなことを考えながらも、吹奏楽によるベートーヴェンの不思議な響きをを堪能したのでした。 後で頂いた当日のライブCDを、今日また聴きながら実感したのでありました。 |