直線上に配置

16.なぞの疾病U

2005.10.15


 昨年(2004年)のことでした。仕事帰りにコンサートを聴こうとホールへ向かう途中に違和感を感じました。「目が疲れているのかな」という感じで、遠くのものが少し二重に見えたのです。ホールでの座席も後ろの方だったため、ステージを見つめるのも多少辛かったのでした。
 翌日、会社に向かうため家から外に出ると、景色が二重に見えます。二重に見えるというのは、右目で見ている点と左眼で見ている同じ点とを一点に合わせられないと言うことです。前日はなんとか合わせることが出来たのですが、この日は二重にずれたままです。それでも、目が疲れているのだろうと思い、そのまま会社へ行ったのでした。幸い、手元あたりの近くは二重にずれることはなかったので、仕事への支障はありませんでした。
 更に翌日、二重にずれている量が大きくなっています。元に戻る気配はありません。
 三日目、治っていません。そして、眼科医へと向かいました。

 基本的な検査をしたあと、先生の診察です。先生の人差し指を追いかけて、右を見たり、左を見たり、ライトを当てられたり。そして、先生が言うには、
「運動機能に問題はないようだし、神経がおかしくなっている様子はないし、外からの診察では、異常は見つかりません。あなたが異常だと訴えなければ、問題があることはわかりません。」
 つまり、症状も原因もわからないと言うこと?
 そんなこと言われても、こっちは物がひとつに見えなくて困っているのですから、、、
「どうします。」
 どうしますって言われたって、、、
「原因がわかりませんから、病院へ行って精密検査をしてみるか、、、薬を飲んでみますか?」
 え、原因もわからないのに何の薬を飲むのですか?
なんにでも効く薬なんですけどね。」
 初めて聞きました。医者の口からが「なんにでも効く薬」と言うことばが出るのを。私は怪訝そうな顔をしたのでしょう。
「○○○○という、一種の抗生物質なんですけど、一週間飲んでみて改善されなかったら、精密検査してみましょう。」
 ということで、薬を出してもらいました。と、同時に矯正用の眼鏡を作るための処方箋も出してもらいました。

 仕事には支障がないといいましたが、外出したときは大変でした。すべてのものが二重に見えるのです。道路なんかはVの字に見えますし、一番怖かったのは駅のホームです。線路がX字にになって何本も見えるのです。ホームから落ちないようにいつもびくびくしていました。

 薬を飲み始めました。三日経っても、改善の兆候が見られません。処方箋を持って眼鏡屋へと向かいました。矯正用の眼鏡を作るのです。これから年末を控え、暮れに帰省をするのに車を運転できないと困るのです。
 眼鏡屋さんからは「ものすごい矯正量だねぇ」と言われましたが、目がまともに見えなければ仕方ありません。一週間ほどで出来上がると言うことでした。眼鏡代三万六千円です。

 朝起き、目を開けるときに「治っていますように。」と祈り、そしてがっかりする日が続き、薬を飲み始めて一週間が経過しました。
 再び、眼科医へ行きます。立体視の検査をしました。
「良くなって来てるね。もう一週間薬飲んでみましょうか。」
たしかに、二重にずれている量は少なくなってきました。

 眼鏡が出来上がった日。私の目もほぼ治っていました。使うあてのない眼鏡がひとつ残りました。まぁ、いつ同じ症状が出るか分りませんからね。

 それにしても、何だったのでしょう。なんにでも効く薬が本当に効いたのでしょうか?。放っておいても2週間で治ったのかもしれません。
 今となっては、治ったことを喜ぶことしか出来ないのです。

 ふと、思い出しました。発症する少し前に、開封して2年くらい経った古い目薬を使ったことを。でも、それが原因だったかどうかは、解らないままなのです。 

前を読む 『休むに似たり』TOP 次を読む



Copyright(C)2005 T.Miyazawa All Rights Reserved.

直線上に配置